内容説明
『夢解釈』出版(一九〇〇)以前のフロイトが最も親しく手紙を交わしたヴィルヘルム・フリース。正教授職への道を閉ざされ学界でも受け入れられない若きフロイトはこのベルリンの耳鼻科医に自ら見た“夢”とそれについての考察を書き送った。二人の交流の記録を丹念にたどって当時のフロイトの特異な思考世界に分け入り、精神分析誕生の秘密をさぐるとともに従来軽視されてきたフリースのフロイトに対する影響を詳細に描き出す。
目次
第1章 幽霊たち―父ヤーコプと友フリース
第2章 フロイトとフリース
第3章 自己分析の開始、エディプス、糞便からの解放
第4章 死と父になる「歩み」
第5章 「三人の運命の女神」の夢
第6章 父の系譜と母の死
第7章 「父の詩」の方へ
第8章 “夢”のあと
補遺 フリースの『生命の流れ』における父親の除外
著者等紹介
秋吉良人[アキヨシヨシト]
1961年生。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、國學院大学教授。文学・思想史。『サドにおける言葉と物』(風間書房、2001年、渋沢・クローデル賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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林克也
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とても読み難い本だった。文章の述べていることがなかなか頭の中に収らず、苦労して読んだ。 その結果、フロイトが、ヴィルヘルム・フリースというユダヤ人耳鼻咽喉科医から相当な影響を受けたということはある程度解った。しかし、父ヤーコプとの関係や、父から受けた影響は、本当のところどうだったのだろうか?どうも捉えきれなかった。 2016/04/07
yoyogi kazuo
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フロイトが無名で不遇な時代にほとんど唯一の心の支えとして「夢判断」執筆の過程を助けたと言われる耳鼻咽喉科医フリース。この本ではフリースの著書(「鼻と女性器」)の内容も解説されているが、およそぶっとんだ「トンデモ科学」としか思えない。フロイトの唱えた夢判断や性欲論も当初は同様の胡散臭さをプンプン発していたのだろうと思った。にもかかわらずフロイトの理論が世界に大きな影響を与えたのは、「人間は無意識に支配されている」という彼の発想が二十世紀の神経症的人類に深く刺さった故であろう。2022/11/27