内容説明
南米に棲む動物にナマケモノというのがいる。この動物こそ私の理想であると小平博士はいう。博士はいうまでもなくフィールズ賞に輝く数学界の泰斗である。本書は戦後初に招聘されたプリンストン高級研究所からのたよりなどの随想をはじめ,科学・技術の問題,数学とその周辺のこと,日本の教育など,折にふれて書かれたエッセイ集である。“怠け数学者”の含蓄に富んだこの記録は読者に多くの示峻を与えるであろう。
目次
プリンストンだより
思い出すことなど
プリンストンにおける朝永先生
ウルフ賞の話
学術交流の周辺〈聞き手〉伊東俊太郎
21世紀の主役へのメッセージ
科学・技術と人類の進歩
数学の不思議
ノートを作りながら
数学の印象
一数学者の妄想
回顧と……
難かしくなった数学
発見の心理と平面幾何
プリンストンの思い出
ヘルマン・ワイル先生
数学とは何だろうか〈聞き手〉飯高茂
このままでは日本は危ない
原則を忘れた初等・中等教育
New Math批評
数学教育を歪めるもの
不可解な日本の数学教育
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
slip001
4
『一度アティヤに「基礎論に興味がありますか」ときいてみたんですよ。そしたらぜんぜん興味がない、厳密性というのは時代の関数だから、そんなこと心配する必要はないっていうんですよ。』という部分は印象深かった。2015/01/08
がまくん
2
僕に取っての歴史上の偉人達(アティヤ、ワイル)が身近に感じられるのがよかった。他のユーザーも記している『一度アティヤに「基礎論に興味がありますか」ときいてみたんですよ。そしたらぜんぜん興味がない、厳密性というのは時代の関数だから、そんなこと心配する必要はないっていうんですよ。』というところは印象に残った。2015/07/06
おもち
0
冒頭のプリンストンだよりがよかったです。家族へ向けた便りを元にしているので別段気を使うことなく率直に1949年の当時の状況が述べられています。湯川秀樹博士や朝永振一郎先生、 ヘルマン・ワイル氏にロバート・オッペンハイマー氏、アンドレ・ヴェイユ氏、アインシュタイン氏といった今や歴史上の偉人といった感のある方々の行動の記述があったりするのが興味深いです。今までその業績という形でしか知らない人々が急に生き生きと人間味を帯びた形で目の前に現れてくるようで実に面白かったです。2010/01/13