内容説明
患者は痛かったり、苦しかったり、淋しかったり、怖かったり、焦ったりしていて、それを何とかしてほしいと思っているのです。確かに教科書には、疾患のことが詳しく記述されていますが、個々の患者が何を思い、どのような助けを必要としているかは、当人でなければ分かりません。いえ、当人ですら、分からないときがあります。そこで、患者はときに看護婦の理解を越えた反応を示します。しかも、より深刻な問題は、そうした患者の精神的な不安定さではなく、そうした患者に手を焼く看護婦自身の精神状態にあるのです。そんなとき、ホックシールドの感情労働という概念に出会ったのです。…感情労働としての看護について理解するのは、一つには看護婦自身のメンタルヘルスのためでもありますが、もっと大事なのは、それによって患者の理解が深まり、ケアの質も高まるということです。
目次
第1章 序論
第2章 世間の水につかる―ケアを担う看護婦を選抜し、テストし、そして期待する
第3章 ケアについてはまったく何も語られない―看護の知の定義づけ
第4章 患者の具合の悪いところから学ぶ―看護の仕事の定義づけ
第5章 病棟婦長と感情ワークの基礎構造―病棟での感情ワークを目にみえるものにすること
第6章 病院で死ぬこと―究極の感情労働
第7章 ケアリングの軌跡―ケアリングのスタイルと能力の時間にともなう変化
第8章 結論
著者等紹介
前田泰樹[マエダヤスキ]
一橋大学大学院社会学研究科。主要論文に「情報経験の語りとケアの論理―痴呆に関する問診場面の相互行為分析―」『現代社会理論研究』第9号(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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