内容説明
人はどこから来て、どこに行くのか。この世界に生きることの不思議を、古びることのない比類なき言葉と、曇りなき眼差しで捉え、生と死、男と女、愛と憎しみ、幼児から老年までの心の位相を、読む者一人一人の胸深く届かせる。初めて発表した詩、時代の詩、言葉遊びの詩、近作の未刊詩篇など、五十冊余の詩集からその精華を選んだ、五十年にわたる詩人・谷川俊太郎のエッセンス。
目次
白から黒へ
かなしみ
はる
二十億光年の孤独
ネロ
僕は創る
海
午の食事
帰郷〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クプクプ
82
面白かったです。特に1970年代に書かれた「生きる」という詩と1980年代に書かれた「少年Aの散歩」という詩がよかったです。私はよく人から、もっと自然体で生きろ、とか、もっとバランスを大事にしろ、とアドバイスされますが、谷川俊太郎は私に無いものを持っていて、読んで精神的な迷いが減ると感じました。谷川俊太郎は短い文章の中で、読者の気持ちをスッとリラックスさせてくれます。即効性がある詩だと思いました。谷川俊太郎を理解できて、非常に前向きな気持ちになった一冊でした。2023/01/17
紫陽花と雨
23
ワタクシ、谷川俊太郎さんという方をよく知らず誤解していたようです。「生きる」など真面目な詩のイメージが強かったので、若い頃の、ちょっととんがっている詩や、ことば遊びの「おなら」や「う◯…(以下自粛)」とかに驚き(笑)いやでも面白いんです、谷川さんの詩、声出して読みたくなります。ことば遊びが本当に面白くて朗読向き。「黄金の魚」「昨日のしみ」の言葉に切なくなりつつ染み入り。個人的には「朝のリレー」が各国に朝日が昇る様が見えるようで1番好きです。ふふふと笑って少し切なくなる言葉たちにも出会える本。2018/07/10
佐島楓
22
ふざけているような、言葉遊びをしているような中に、真理が潜んでいる。「生きる」という詩がストレートで好き。2013/01/05
kochi
21
詩人谷川俊太郎の10代デビューから70歳前の1990年代までの作品が選ばれたもの。今なお現役の詩人について、コンパクトにまとまっている。用いられている言葉は平易なものながら、あっちでぶくぶく、こっちでぶくぶくと言葉が湧き出ていて、遠くから見てみると一つの作品が出来上がってくるような感覚で、単なる言葉遊びになってしまうその手前で留まっていて、つながる言葉の対比も面白い。例えば、モーツアルトの音楽を表現しているだろう「魂の真昼」「装飾音の小鳥たち」「16音符の首飾り」「耳の魚たち」等の生き生きとしていること!2019/07/21
しいたけ
18
日向で読むべき詩集だと思っている。いろいろなところから、少しずつ抽出した谷川さんの詩。「朝のリレー」を読むと、目の前が開けたような不思議な高揚感に包まれるし、「生きる」を読むとまわりの景色がきらきらと輝いてみえてくる。でも今回心にぐっときたのは、『じゃあね』の一節。「くやしかったあの日のこと/けれどそれももう過ぎ去って/じゃあね/年をとるのはこわいけど/ぼくにはぼくの日々がある」。ここに感動するなんて、自分も年をとったんだなあ。2015/11/03