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内容説明
明治になり、クルトが再び写楽の存在に目をつけた。それまで誰もが思いもよらなかった「肖像画」という視点からである。以後、写楽はあらゆる角度から見つめられ、肉づけられ、「実存」の存在を与えられるようになった。それは、江戸期の蔦屋周辺の人々の不気味な沈黙の静けさと反対に、現代の知識人はあらゆる考証を行い、「写楽」を囂しく論考する。「静」と「動」とが写楽の位置を高め、暗闘の中から光の溢れる高みへと連れだした。しかし、写楽自身の肖像はいまだに描かれていない。
目次
第1部 斎藤十郎兵衛説・写楽=写楽説
第2部 絵師説
第3部 役者説他
第4部 小説、戯曲他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
今日は決算前
2
✕ 謎多き浮世絵師東洲斎写楽の謎を追った著作。写楽を考察した複数の説の記載がなされている。高橋克彦作品より興味を持った。阿波の能役者斎藤十郎兵衛説が裏付けもあり有力だが、比較的しっくり来たのは、秋田蘭画グループ説、酒井抱一説、山東京伝説。絵や字が似ているという事を根拠にしている北斎説や豊国説、この歌麿説は合理性に欠けているように思う。高橋克彦浮世絵3部作で説明されていた歌麿説の方がよっぽど説得力があった。マイナーな人達の説に興味を持ち理解するには歴史的な背景や浮世絵の世界の理解が必要。【図書館本】2022/06/11
紫
0
東洲斎写楽の正体にまつわる諸説とその要旨をまとめたガイドブック。昭和の間、これが写楽の正体だと持ち出されてきたあんな説やこんな説。ただし、1995年刊行ということで、すでに斎藤十郎兵衛説が定説扱いです。意外に説得力があった別人説は山東京伝説、酒井抱一説、鳥居清政説といったところ。どうやら写楽候補者のネームバリューと仮説自体のクオリティは一致しないようであります。首を捻ったのはフィクションの扱いまで収録されているという点。どうせでしたら、清水義範先生の『望郷絵師』も収録してほしかったです。星4つ。2015/06/06