内容説明
カント思想の基本的な方法を再確認しながら、できうる限り簡潔に「カントの全体像」を捉える。
目次
第1章 「哲学者」と「観察者」(真の学問としての「形而上学」の条件―「哲学者」の視点;人間観察による「人間学」の構想―「視察者」の視点)
第2章 「哲学者=カント」の調停方法―二つの「批判」から「形而上学」へ(『純粋理性批判』概要;「実践理性」の諸問題;「批判」から「形而上学」へ)
第3章 「観察者=カント」と「婚姻」をめぐる問題点(両極化された性とその総合―「自然本性」と「自由」;「アプリオリな総合」としての「結婚」の可能性;女性の「道徳的性質」)
第4章 『判断力批判』―カント体系の最終的総合(問題点の整理;「目的論」―二つの「目的論」の媒介と「究極目的」;「美感論」―「趣味判断」の分析を中心に)
結び 「人類」と「性差」の問題点
著者等紹介
菊地健三[キクチケンゾウ]
1946年秋田県生まれ。1981年専修大学大学院博士後期課程修了。同大学専任講師。1990年同大学教授
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
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初期の段階において、カントがルソーの教育論から多大な影響を蒙っていた。ルソーにとっては「男児エミール」の教育が問題であったのに対し、カントにとっては「女児ソフィー」の教育が問題となっているのである(12頁)。 「最高善」とは「共同体的な全」「最高の政治的な善すなわち永遠平和」であり、人類が最後に到達すべき「理性の究極目的」にほかならない(39頁)。 カントが女性に対する現実社会の不当な扱いを公然弾劾しているのは『啓蒙とは何か』(1784年)である。「啓蒙」とは「人間が自ら招いた未成年状態から抜け出ること」2018/05/20