内容説明
犠牲者2人を出し、667人を被曝させ、31万人を避難させた、この国最大の原子力の惨事は、どうして起こったのか?たんなる沈殿槽が、なんで突然「裸の原子炉」と化し、20時間も「臨界」がつづいたのか?「臨界」の起こった経過を追い、隠されていた事実をもとに、このあり得べからざる事故を引き起こした核燃機構の責任を明らかにする。
目次
はじめに JCO臨界事故はなぜ起こったか
1 1999年9月30日JCO臨界事故発生
2 旧動燃が引き起こしたJCO臨界事故
3 2003年3月3日臨界事故、刑事裁判判決
4 政府に質問したら矛盾だらけの回答
5 臨界事故―被曝住民は訴える
資料編
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のの
6
原子力技術者は「無能」というような一部の表現には辟易したし、説明がわかりづらいという難はあったものの、終始一貫した「現場労働者の責任論に終わるのではなく、無理な要求をつきつけた動燃やずさんな原子力政策を行ってきた国の責任をこそ問うべき」という主張に心底同意する。結局このときあやふやにしてきたツケが、いま福島原発事故というかたちで回ってきているのだろうな。この臨界事故のときもいまの原発事故でもわかりやすく誰かを犯人に仕立てて、全責任を押しつけてしまうが、それこそが次の事故を引き起こす引き金になるのだろう。2012/03/14
更紗蝦
2
JCO臨界事故における動燃と科学技術庁の責任を徹底的に追及した本。事故発生当時、やたらにテレビで「バケツで作業していた」という事ばかりが報道されましたが、バケツの使用それ自体は臨界事故とは何の関係もないということが詳しく説明されています。臨界事故が発生した経緯を丁寧に追っていけば、事故の責任の所在が動燃と科学技術庁にあるのは明白であるのに、裁判では作業員に全ての責任をなすりつけた判決になっているということは、つまりは裁判所もグルとなって核燃料サイクルを推し進めているということです。2013/02/04
nota
1
1999年に起きた臨界事故についてまとめた本。共著に市民の会の名が入っているが、いわゆる「運動」という要素はなく、中立に述べられていると感じた。 1)事故原因は作業にバケツを使用したこと−は印象操作。 2)臨界事故が起きて、それが瞬間的でなく継続してるということに当のJCOが気がついたのは事故後5時間たってから。それもたまたま。 3)裁判の結果、法人としてのJCOに課せられた罰金は100万円、所長やグループ長なども有罪となったが、全員執行猶予付き。【感想】誰も責任を取らなくていいシステムが日本中にある。2019/10/23