出版社内容情報
痴呆性高齢者は、何もわからない「恍惚の人」ではない。「自分が壊れていく恐怖」と「孤独の不安」に苦しんでいるのです。痴呆の病因研究と抗痴呆薬開発の華々しさとは裏腹に、痴呆性高齢者の処遇は、凄惨の一語に尽きます。閉鎖処遇、薬物の大量投与、身体拘束、治療放棄など、デスメーキング(death-making)の苦悶のなかで命を縮めています。痴呆性高齢者の悩みに真摯に向き合い、彼らのこころを拓き、援助することが、保健・医療・福祉にかかわる人びとの使命なのです。
はしがき-「痴呆もどき」と「治療もどき」●浅野弘毅/痴呆という生き方●小沢勲/痴呆を患って生きる●高橋幸男+石橋典子/痴呆高齢者の介護と医療の役割について●竹中星郎/看護のフィルターを通して見えてくる痴呆高齢者の生活-人間社会における一つのリアリティー-●阿保順子/痴呆性高齢者の暮らし●山崎英樹/縛り過ぎだぞ!ニッポン●大熊一夫/高齢者の権利擁護-介護保険と成年後見-●広田伊蘇夫/【座談会1】老人問題あれこれ●羽田澄子+浜田晋+広田伊蘇夫/【座談会2】痴呆性高齢者は癒されているか?●石橋典子+大熊一夫+小沢勲+浅野弘毅/BOOKガイド-「痴呆性高齢者のこころと暮らし」-●浅野弘毅/あとがき●浅野弘毅
高齢化社会とはいわれるものの、痴呆性高齢者の処遇は、ホントにこれが医療か、これが介護か、これが福祉か、と思わずにはいられないほどです。「長寿国ニッポン」は、老人病院を見れば幻想だということがよく分かります。かつて呉秀三は、心病む人々の苦悩は病気の苦しみとこの国に生まれた不幸の二重の不幸を背負わなければならないと嘆いていましたが、21世紀の今日においても事態の本質は変わっていません。病者を守り、共に生きようとするのではなく、排除し収容することに熱心な行政や心ない治療者の
改革こそ問われなければならないと思います。
内容説明
本書では、痴呆性高齢者のこころと暮らしと権利の保障に焦点をあてている。
目次
痴呆という生き方
痴呆を患って生きる
痴呆高齢者の介護と医療の役割について
看護のフィルターを通して見えてくる痴呆性高齢者の生活―人間社会における一つのリアリティ
痴呆性高齢者のくらし―張り子の医者が願っていたこと
縛り過ぎだぞ!ニッポン
高齢者の権利擁護―介護保険と成年後見
座談会・老人問題あれこれ(羽田澄子;浜田晋;広田伊蘇夫)
座談会・痴呆性高齢者は癒されているか?(石橋典子;大熊一夫;小沢勲;浅野弘毅)
BOOKガイド―「痴呆性高齢者のこころと暮らし」
著者等紹介
浅野弘毅[アサノヒロタケ]
1946年生まれ。東北大学医学部卒。現在、仙台市立病院神経精神科部長兼老人性痴呆疾患センター室長
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