きのこの生物学シリーズ<br> きのこと動物―ひとつの地下生物学

きのこの生物学シリーズ
きのこと動物―ひとつの地下生物学

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  • サイズ A5判/ページ数 185p/高さ 21X16cm
  • 商品コード 9784806723349
  • NDC分類 657.82
  • Cコード C0045

出版社内容情報

★★★朝日新聞評=「世界に例のない本」という自負に応えたユニークな内容になっており、マツタケなどの食用きのこしかしらない者には、地下の王国を作っている異界のものどもの不思議に目を見張らされる。★★★  ●●●本書「はじめに」より=この本はどこから読んでいただいてもよいが、構成は次のようになっている。1~3章では、動物ときのこの関係を〈食う・食われる〉の観点からみる。菌食の意味やきのこの見方について議論を深めたい。第2章では、昆虫と菌類の共生もあつかう。ここであつかうほかにも共生現象は存在するけれども、その菌類は「きのこ」の範囲をはずれるのでふれない。同じ理由で、水生動物と菌類の関係にもふれない。かといって、「きのこ」の範囲をはずれることをすべて排除したわけではない。この、本書前半部分は、元来私の関心外だったので、消化不良のところがあろうと思う。4~6章では、動物の生活の後始末、すなわち排泄物や死体分解と菌類との関係をみる。第4章の後半以降はほとんど私自身の研究紹介のようになることをおことわりしておきたい。その部分は、過去25年ほどの間に見出されたことで、私以前にはほとんど知られざる世界であったといってよいだろう。素朴で、前世紀までにわかっていてしかるべき話ばかりだと思われる向きもあるかもしれないが、これが菌類をめぐる学問ないし地下生物学の現実である。くどいところもあるかもしれないが、ひとつの菌類生態学的研究がどのように行われたかもみていただけるのではないかと思う。7章では、複雑にからみあう自然を、共生、菌食、窒素などの面から再度のぞいてみる。力不足ではあるけれども、生き物はいうにおよばず倒木や糞にいたるまでの、すべての存在の尊さを感じ取っていただけるのではないかと思う。ヒトの影響についてはふれないが、ヨーロッパではそれによって絶滅に瀕している菌類があるとの議論が起こっている。まえがきに書きたいと思いながら、文章としてまとまらなかったことどもを以下に挙げさせていただきたい。動物学・生物学から「生活学」、新博物学へ。菌類ハ菌類デアル(菌類を植物だと思ってみたのでは真に迫れない)。下を向いて歩こう(きのこ菌糸やモグラの身になって考えてみよう)。排泄や死は「終わり」ではなく、ひとつの「始まり」である。堂々たるスカトロジー(scatology、糞尿学)へ向けて。ただし、この本がこれらの精神で貫かれているというわけではない。副題の「地下生物学」は「アングラ生物学」としたほうが当たっているかもしれない。●●●  【主要目次】▲▲第1章・けものときのこ=けものがきのこを食う/リスの菌食/モモンガの菌食/ネズミの菌食/その他のけものの菌食/きのこ食の栄養学/きのこがけものを食う/真菌症  ▲▲第2章・昆虫ときのこ=昆虫がきのこを食う/スズメバチとシラタマタケ/菌食の展望/きのこむしとファーブル/シロアリのきのこ栽培/アリのきのこ栽培/トビムシの菌食/その他の「むし」の菌食/きのこが昆虫を食う/冬虫夏草  ▲▲第3章・線虫ときのこ=線虫がきのこを食う/菌食性線虫/きのこが線虫を食う/「肉食性きのこ類」/線虫を破壊するカビ  ▲▲第4章・排泄物ときのこ=糞そのものに生える菌/糞生菌/土壌小動物の糞と菌/尿・糞の分解跡に生える菌/「アンモニア菌」/キャンプ地の野外便所跡ときのこ/タヌキの糞場ときのこ/モグラの排泄所ときのこ  ▲▲第5章・死体ときのこ=死体が朽ちたあと/トムライカビ、そして再びアンモニア菌/「死体探知茸」/硬組織のくさり/「毛生菌」・「骨生菌」/虫たちの死体は/易分解部分/難分解部分  ▲▲第6章・廃巣ときのこ=昆虫の生活の後始末/クロスズメバチの巣跡とアンモニア菌/森アリの廃巣とカラカサタケモドキ/坑道ときのこ/「トンネル効果」  ▲▲第7章・生態系における動物ときのこ=生きとし生けるもの/生態学の基礎としての菌根学/木・きのこ・けもの+細菌の四者関係/倒木もまた森林の一要素/「菌態蛋白質」/菌食と「獲得消化酵素」/「木」を食うのか「朽木」を食うのか/「糞化」と「糞菌食」/破砕と化学変化/糞はめぐる

目次

けものときのこ(けものがきのこを食う;きのこがけものを食う)
昆虫ときのこ(昆虫がきのこを食う;きのこが昆虫を食う)
線虫ときのこ(線虫がきのこを食う;きのこが線虫を食う)
排泄物ときのこ(糞そのものに生える菌;尿・糞の分解跡に生える菌)
死体ときのこ(死肉が朽ちたあと;硬組織のくさり;虫たちの死体は)
廃巣ときのこ(昆虫の生活の後始末;坑道ときのこ)
生態系における動物ときのこ(生きとし生けるもの;「菌態蛋白質」;「糞化」と「糞菌食」)