内容説明
縄文人の豊かな精神文化を受け継いだ先住民族アイヌの生活・儀礼・伝承の中に太古のコスモロジーの輝きと未来に繋がる「破壊されざる無限の生命の流れ」を見出し新しい感覚的叡知の系譜を発掘した比類なきアイヌ論。
目次
第1章 物々交換という思想(狩猟の民という錯覚;卓越した外洋航海術;モノとマナ ほか)
第2章 イオマンテの真実(「事物化」からの解放;原初のカミは動物であった;「消尽」されるクマの生命 ほか)
第3章 「ゾーエー的生命感覚」とは何か(ゾーエーとビオス;「場所」としての自然;破壊されざる生命への確信 ほか)
第4章 文字を超えた逞しい表現力(無文字は蒙昧を意味しない;「生きた言語」と「死んだ言語」;生活に溶け込む歌謡 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
51
4つの章からなる。 1 物々交換という思想 2 イオマンテの真実 3 ゾーエー的生命感覚 4 文字を超えた逞しい表現力 ゾーエーは、ギリシャ語においてビオスという言葉と対になっている。ビオスが真珠であり、ゾーエーが糸であるという比喩の紹介がある。 あとがきによれば P220「アイヌ文化から未来学的意義を発掘する」 のが目的だったとのこと。 読みものとしては、深い考察があり面白い。2016/11/27
按摩沙弥
2
前衛的仏教者である著者による、前衛的縄文アイヌ論。 アニミズムや原始宗教の位置付けを、下等とせず、根源的生命観としてとらえ直されている。 終わる命と終わらない命。 いのちの矛盾を、解決するゾーエー的生命観にいざなわれる。 アイヌや縄文への興味のみならず、今生きているいのちについて考察されている渾身の生命哲学書。2016/12/04
Yoshihiro Yamamoto
2
A 「仏教渡来前の古代日本人がどのような精神構造を持っていたかを探るため、アイヌのアミニズム的世界観を見直す」という試み。イオマンテは人間とカムイ(神)との贈与の運動。動物や植物の「事物性」を取り除き(ビオス)、「至高性」の世界(ゾーエー(存在の時間))に送り出す宗教行為。集団的恍惚にふけり、羆の肉を食べ死から蘇る(ビオス→ゾーエー)神と合体して、生命力を受け取る。かつて沖縄にもあった食人の風習やイエスの受難、貝塚の人骨などもこの流れの中で解釈する件は感銘を覚えた。御柱とオシラサマを結びつけたのも面白い。2016/03/10
ひろゆき
2
アイヌに対する牧歌的な自然崇拝といった皮相なみかたを否定。混血日本人の基底にあるものを、アイヌ、沖縄、縄文から探し出す。本能的狂い、血、死、歓喜。言葉としてだけ知っていたイオマンテのあまりに血生臭い記録を初めて読んだ。突然目覚めて、こういう儀式を私がペットにしたら即逮捕ですな。死と生の境界線のないこと、文字を持たないことで言葉をおろそかにしない言霊の感覚。意外に現代の我々の内にもある様々な感覚。2014/02/01
胡瓜夫人
0
図書館で。アイヌの文様、刺繍。踊りと芸能。2011/02/06