内容説明
牧師として誇り高く生きてきた父は、退職後、いつからか道に迷い、人の顔を見分けられなくなり、一つ一つ、人をこの世につなぎとめている絆を失っていく。言動がくるくる変わり、奇行をくりかえす父。母の急死で、仕事をしながら介護を余儀なくされた息子。忘却と混乱のなかに沈んでゆく父にふりまわされながらも、やがて息子は、二人の間にはじめて不思議なやすらぎが生まれるのを感じる。老いゆく父の悲しみといらだち。家族の悩みと迷い。ナーシングホームの日々。男にとって介護とは…。誰にでもかならず訪れる老親介護の真実を、ユーモラスに切実に描く感動の絵エッセイ。
目次
1回表 プレイボール
2回裏 父さんの痴呆がはじまった
3回表 母さんが死んだ
4回裏 だれが父さんをみるのか?
5回表 ぼくがやらねばならない
6回裏 介護施設をさがす
7回表 つかのまのおだやかな日々
8回裏 父さんの悲しい反乱
9回表 入院、そして…
10回裏 サヨナラ、父さん
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鳴蝉
2
図書館借り。胸がいっぱいになる。2014/03/04
中林助手2
0
父の衰えゆく様を綴るイラストエッセイ。【冬のある朝、僕らは父が入所しているホームの近くを散歩していた。しきりに雪が降っていた。ふと振り返って二人が歩いてきた跡を見ると僕の足跡はまだくっきりと残っているのに、父の足跡はもう消えかかっていた。そのことを僕は軽い調子で「不思議なこともあるもんだね」と父に言った。すると父は「不思議はないさ。わしは消えかかっているようなもんだ」と答えた。それから六年。僕は父が、一つまた一つと人をこの世に繋ぎ止めている儚い絆を失ってゆく様を見つめていた。これはぼくらみんなの物語だ。】2021/10/09