内容説明
本書は、東京大学法学部に助手論文として提出し、その後法学協会雑誌に掲載した「刑法における相当因果関係」を基礎としている。相当因果関係説が実務に対して有効な判断基準を提供できないでいる一方、学説には客観的帰属理論への強い関心が存在する中で、そのような規範的判断基準への性急な移行が本当に必要であるのかを問い直す必要があるという旧稿の視点は、本書においても変わっていない。ただ、旧稿以後に発表された多くの文献を渉猟し、十分な検討を加える点では、体調を崩したこともあって、必ずしも完全ではない。しかし、いつまでも放っておいても仕方がないので、思い切って出版することにした。
目次
第1章 基礎的考察(問題の所在;因果関係の概念;基本概念と事例類型)
第2章 条件関係(conditio sine qua non公式;合法則的条件公式)
第3章 帰責限定の理論(条件説;相当因果関係説;客観的帰責理論)
第4章 因果関係理論の再構成(利用可能な法則性としての因果関係―私見の基本構想;因果関係の判断;設例による検討)
著者等紹介
林陽一[ハヤシヨウイチ]
1957年東京都に生まれる。’81年東京大学法学部卒業。現在、千葉大学法経学部教授
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