出版社内容情報
著者は『戦略としての家族――近代日本の国民国家形成と女性』(新曜社)で、現在の家族の源は近代(明治・大正期)の国民国家形成にあり、女性たちが進んで近代的な家庭役割を演じてきたことを、鮮やかに論じてみせました。本書では、夫婦の役割分担と性関係にもとづく家族をを「ジェンダー家族」と名づけ、明治から現代まで、女の生と性を固定化してきた歴史を史料によって跡づけ、血縁・性別にとらわれない、同性愛もふくむ開かれた家族をグローバルな視点から展望しています。
私が本書でこころみたいのは、近代の国家と社会がどのような仕組みと仕掛けのもとで、ジェンダー家族をつくりあげてきたのかをしっかりと検証することだ。ここで留意すべきは、それは何も、強力な国家や狡猾なイデオローグが緻密なプロットによって、人々にそうした家族を強制し女性を抑圧してきた、というようなことではない。それどころか、むしろ国の政策や支配的な社会規範に抗して、あるいは自らの幸福と満足を求めて、女性たちが先陣を切って積極的に自らをつくりあげていったのでもある。
本書ではそうした側面に焦点を当てることで、より深く、私たちにかけられたジェンダー家族の縛りを解体する方途を探りたい。(「ジェンダー・家族・女性のポリティクス」より)
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【関連書籍】
『 迷走フェミニズム 』 E・バダンテール著 (定価1995円 2006)
『 アイデンティティの権力 』 坂本佳鶴恵著 (定価3675円 2005)
『 ワードマップ フェミニズム 』 江原由美子ほか編 (定価2730円 1997)
【新 刊】
『 ワードマップ エスノメソドロジー 』 前田泰樹ほか編 (定価2520円 2007.8月)
内容説明
女性の生と性への縛りに抗し、果敢にたたかってきた近代のフェミニストたち。明治・大正から戦後までのジェンダーと家族・国家の歴史に分け入り、異性愛や血縁に拠らない新たな家族のつながり、社会との関係性を探る。女性天皇・男女共同参画をめぐるジェンダーバッシングにも正面からこたえる。
目次
ジェンダー・家族・女性のポリティクス―序にかえて
1 近代のセクシュアリティと家族―「新しい女」をめぐって(「新しい女」の政治―逸脱する女性像の比較分析;「良妻賢母」思想の表裏―近代日本の家庭文化とフェミニズム)
2 女性の運動のアンビヴァレンス(フェミニズム運動再考―日本における二つの波をめぐって;女性と「権力」―戦争協力から民主化・平和へ)
3 ヘテロセクシズムと天皇制・男女共同参画(家族国家観とジェンダー秩序;「男女共同参画社会」の女性天皇問題とフェミニズムの悪夢)
ジェンダー家族を超えて―フェミニズムの課題
著者等紹介
牟田和恵[ムタカズエ]
京都大学大学院(社会学専攻)修了。大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門は社会学・ジェンダー論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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