内容説明
少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げ、少年犯罪を成人と同様に刑法のもとで裁く「厳罰化」が検討されている。少年が刑法で裁かれる、その先に見えるのは、果たして少年犯罪の減少、社会不安の低減なのだろうか。家庭裁判所調査官、犯罪心理学の研究者として数々の非行少年に接してきた経験をもとに、少年更生の理念と処遇を提言する。
目次
第1章 少年犯罪の厳罰化への地ならしが始まった
第2章 罪を犯した少年たちの素顔
第3章 少年の可塑性と保護主義
第4章 少年事件はこのように扱われる
第5章 少年法の3つの処分―保護処分・刑事処分・試験観察
第6章 少年司法厳罰化・適用年齢引き下げ論への批判的検討
第7章 少年司法の理念を刑事司法全体へ広げる
著者等紹介
須藤明[ストウアキラ]
駒沢女子大学人間総合学群心理学類教授。元広島家庭裁判所次席家庭裁判所調査官。専門は犯罪心理学、家族心理学。臨床心理士、公認心理師、さいたま市スクールカウンセラー・スーパーバイザー。裁判所職員総合研修所研究企画官、広島家庭裁判所次席家庭裁判所調査官などを経て、2010年から現職。各種の少年犯罪の鑑定を手掛ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゲオルギオ・ハーン
27
少年犯罪について司法手続きの流れや教育的措置の他、少年法適用年齢の引下げの流れについて背景や海外の動向も書かれている。著者は学者であり、家庭裁判所の元調査官でもあるので実務と知識両面をカバーしていてバランスが良い。社会を震撼させる重大事件がこの30年ほどでいくつかあり、海外と比べると18歳でも適用年齢は高いかもしれない。しかし、犯罪を犯してしまった少年と面談し、背景を分析し、子供と向き合えなかった親も参加させて更生へ取り組む体制は効果が出ており、なぜ18、19歳の子たちを除外してしまうのか疑問しかない。2022/03/24
むつこ
24
現場経験者の著者だからこその優しさが伝わってくる文章。幸いにも私の周囲で重たい少年犯罪はないから当人の資質だけでなく環境を変えることで更生するのはまれなことだと思っていた。が、現場の人たちの信じる心はすぐに現れなくてもながーい目で見守っているのだ。学校が楽しいところにするために勉強を(個人的に)教える調査官の真摯さに応援したい、共感力を持つ子供たちが一人でも増えますように祈りたい。2020/01/12
hisayparrish
1
素晴らしい本だ。少年犯罪が増えて凶悪化しているとかの誤った認識が社会に広まっており、これを背景に少年法が甘いとか少年年齢の引下げ論が蔓延しているが、実は件数は激減しているし、少年法の方が成人として処罰されるよりよほど厳しい措置が執られ(成人だと多くが起訴猶予や罰金で放免されるー再犯につながりやすいーものが、少年だと施設収容などの保護・教育処分が行われる)、更生に結びつけている。18.19歳の者から更生の機会を奪う年齢引下げは、日本の将来にとって100害あって1理なしだと思う。多くの人に読んで欲しい本だ。 2019/08/04
ゼラニウム/フウロソウ科
0
昔読んだ2021/09/29