内容説明
どの人間にもある二重人格性を極端に持つヘンリー・ジキルは、自分の中にひそむ善悪の二面を完全に分離しようという幻想にとらわれる。科学者としての手腕により、性格も容貌もまったく異なる人物に変身できる薬を調合する。悪の化身として暴行、殺人などの悪事をつくすハイドは、別の薬を飲めばジキルに戻れるが、ついには戻れなくなってハイドの姿で自殺する。終章まで真実が明かされない小説の展開が読者をひきつける。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
timeturner
6
さすが作家・大佛次郎の翻訳。自由奔放に、物語を面白く語ろうとしている。その一方で、自分の思うほうに引きつけてしまうため正確さに関して疑問を感じる個所も。2019/04/04
はち
3
見返しでいきなりネタバレされてしまったのでわくわくどきどきという感じではありませんでしたが、やっぱり人は適度にストレス発散していかないとだめなんだなぁとのんきに考えてしまいました。 大佛さんの訳は少し私には難しい表現が多かったので、違う訳者のものも読んでみたいです。2015/08/10
s
2
最終的にどうなるか、は散々ネタバレされていましたが読みました。 ミステリというよりも、やはり文学と言った方がいいかもしれません。 抱えている悩みがこんな形で自身を支配すること、実際にあり得ます。誰しもが彼といっては大げさかもしれませんが、だれしもが彼に成りうるのではないかと。 こういう物語をミステリとして面白く読ませる事ができるスティーヴンソンはやはりすごい作家なのですね。
のゑる
1
展開とプロットの順番、語り方が秀逸。もしも自分の見た目を完全に変えることができたならーー。好きな容姿や能力のアバターでゲームをし、匿名のSNSで発言できる我々は、薬を手にしたジキルとよく似ている。道徳的な自分を切り離して、恥ずべき自分になってはいないか。過激で利己的で悪意を容易く他人に向けるハイドになりはしないか。切り離した自分が本来の自分を消してしまう恐怖感を持っていようと思う。2022/01/30
taku
1
ラストのジキル博士の手記は興味深い。博士の悲劇は、自身の身勝手さが引き起こしたものだが、他人事ではない空恐ろしさがある。