内容説明
軍艦はそれぞれに人格を持ち、人と同じ運命に支配される。そして艦と人の運命は渾然となり、海原に消える―「大和」型戦艦三番艦「信濃」は、ミッドウェー海戦の敗北で空母として誕生した。海戦にのぞむことなく沈められた悲劇の巨艦の全貌を歴史的背景と共に描く紫綬褒章作家のベストセラー・ノンフィクション。
目次
潜水艦長の家
空母艦長と魚雷
宿命の巨艦たち
「大和」を造った人々
「信濃」建造始まる
空母改造に決定
エンタープライズ見学記
新鋭「大鳳」沈む
進水時の大事故
命名式と逃亡事件〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
電羊齋
2
高校時代に読んで以来の再読。戦時下の海軍を経験した著者ならではの興味深い秘話が多い。そして、本書全体に通底するのは戦死者への鎮魂。信濃は、戦局の逼迫により過酷な工期短縮を迫られ、やがて「未完成品」のまま出港し、多くの乗員とともにあっけなく沈没する。その生涯は海軍、そして当時の日本が抱えていた矛盾の反映。生き残った乗員たちのその後も切ない。2018/08/19
くまきん
0
大和級戦艦の第三艦として計画された「信濃」は、大艦巨砲主義から航空機決戦への戦術の遷移により巨大航空母艦として造られた。しかし、未完成のまま回航して数時間であっさりと米潜水艦の魚雷によって海の藻屑と消える。兎に角形だけでも間に合わせようとした軍上層部の思惑が招いた悲劇。2013/02/21
ちょうかんよむ
0
空母信濃の悲壮ある物語は敗戦に向かう軍人たちのいろいろな思いが溢れている。日本人のダメなところ、敗戦した理由を信濃が教えてくれるように思えてならない。2012/06/10
連雀
0
小学生の頃に読んで衝撃を受けた三の冊の戦記物のうちの一冊です。図書館でハードカバーを何度も借りて、繰り返し読みました。それまでの『大和カッコいい』『ゼロ戦強い!』だけだった戦記物の見方がガラッと変わるきっかけとなったのです。 亡夫を想い、50年が過ぎても靖国神社への参拝を欠かさない艦長夫人が切ない。 豊田穣の勇壮でもなく、悲壮でもない戦記物は好きです。今になって読み返しても、やっぱり面白い。2011/12/29