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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masa@レビューお休み中
98
「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」この詩に茨木のり子の詩人としての姿勢が集約されているのではないだろうか。彼女の詩を読んでいると、凛とした美しさを感じてしまう。こういう表現が合っているかどうかはわからないが、クラスにひとりはいた勉強ができて、みんなに一目置かれていた優等生タイプの女性だなと、勝手に想像してしまうのです。詩って、必ずしもその人の性格や行動を表しているわけではない。でも、だからといってまったくのデタラメでもない。そこには、詩人の欠片が埋めこまれているのではないかって思うんです。2013/08/12
いこ
91
この詩を読んで雷に打たれたようになった。以降に全文引用。「自分の感受性くらい」 ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを 近親のせいにするな なにもかも下手だったのはわたくし 初心消えかかるのを 暮しのせいにはするな そもそもが ひよわな志にすぎなかった 駄目なことの一切を 時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ 2022/09/26
yanae
82
古書カフェすみれ屋で知った茨木さんの詩集。かっこいい。しびれた。表題作はやっぱりインパクト強い。けど、他の作品も強さに溢れてる気がする。1970年代に発表された詩だからか、戦争に関する詩もあって、それもよかった。私自身に詩を読みとく能力があるとも思えないのだけど、かっこいい、の一言でした。「ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな(中略)自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」2018/06/29
かりさ
81
この言葉の存在感。その言葉一つ一つが束になった茨木のり子さんの詩は、ドカンと胸に響くばかりでなく共鳴したり、拒否感が現れたり、様々な自身の感情と対峙する。自分の中の触れて欲しくない部分を抉られるかのような強い言葉はしかし最も欲していた言葉なのかもしれません。強く凛としている部分にもたおやかな優しさも時折感じさせる。ふっと寄り添える瞬間がある。そんな時は迷わず甘えよう。すぐにピシャリと叱咤されそうではあるけれど。気持ちに一本強いバネを持っていよう。簡単に折れず時に柔軟性を持ってしなやかに生きていけるように。2016/01/04
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
67
晩年の作品集『依りかからず』で茨木のり子さんの詩集の世界に触れ、凛とした言葉の数々に背筋が伸びる気がしました。この作品集は1977年初版。詩のための秀麗な言葉はほとんど見られず、日常生活で使っている易しい言葉の組み合わせで、時にユーモアさえ交えながら、世界を切り取っているように感じました。『詩集と刺繍』『癖』『殴る』などすばらしい詩が並んでいるけど、なんといっても表題作には勇気づけられます。2014/09/28