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出版社内容情報
一八世紀から一九世紀初頭にかけてのイギリスでは、風景への関心や異世界の発見とともに「旅行記」が流行した。ちょうどその時期は、大英帝国の拡張期であり、また近代美学の形成期でもあった。本書は、とくに女性の旅行記に焦点を当てて、市民社会の「外部」(異国、野生の自然、未開人、労働者等)へのまなざしが、近代的な「感性」や国家意識を形成する上でどのような役割を果たしたのかを、ジェンダー的な観点から明らかにしようとする。
モンタギュ夫人からメアリー・シェリーにいたる女性作家の手紙や報告は、トルコ、西インド諸島、革命期のフランス、北欧、スコットランド等について生き生きと語っているが、そこには崇高、ピクチャレスク、ゴシック趣味、いわゆるオリエンタリズムの言説が散乱している。しかし彼女らは、自らの「眺める主体」(「美的主体」)という立場に何か居心地の悪さを感じてもいた。女性自身が、「美的対象」として眺められる側に位置づけられていたからである。彼女らの感じとったこの違和感は、当時の美学の根本原理「無関心性」に対する疑義へと生成し、近代美学を支えていた政治的・社会的論理が、階級・人種・ジェンダーという複合的な視点から浮き彫りに
序 章
第一章 美学とオリエンタリズム――メアリー・ワートリー・モンタギュのトルコからの手紙
第二章 コロニアリズムの美学――ジャネット・ショウの西インド諸島旅行記
第三章 風景美学――女性的ピクチャレスクのパラドックス
第四章 革命の風景――ヘレン・マライア・ウィリアムズの『フランス便り』
第五章 反美学――メアリー・ウルストンクラフトの北欧旅行記
第六章 景観旅行の文化政治学――ドロシー・ワーズワスのスコットランド旅日記
第七章 ピクチャレスクと女性的崇高――アン・ラドクリフ『ユードルフォ城の謎』
第八章 美学、ジェンダー、帝国――メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』
原 註
参考文献
「反‐美学」あるいは「美学の反‐伝統」の誕生
人名/作品名 索引
内容説明
オリエンタリズム、ピクチャレスク、崇高美を縦糸に、階級、人種、ジェンダーを横糸に、女性の言説/表象が織り紡ぐ美学的光景が、トルコ、西インド諸島、ピクチャレスク庭園、革命期のパリ、北欧、スコットランドを舞台に、“近代‐美学”を形成する政治的、社会的論理を浮き彫りにする。
目次
第1章 美学とオリエンタリズム―メアリー・ワートリー・モンタギュのトルコからの手紙
第2章 コロニアリズムの美学―ジャネット・ショウの西インド諸島旅行記
第3章 風景美学と女性的ピクチャレスクのパラドックス
第4章 革命の風景―ヘレン・マライア・ウィリアムズの『フランス便り』
第5章 反‐美学―メアリー・ウルストンクラフトの北欧旅行記
第6章 景観旅行の文化政治学―ドロシー・ワーズワスのスコットランド旅日記
第7章 ピクチャレスクと女性的崇高―アン・ラドクリフ『ユードルフォ城の謎』
第8章 美学、ジェンダー、帝国―メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』
著者等紹介
長野順子[ナガノジュンコ]
神戸大学文学部教授
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志村真幸