世界人権問題叢書
グローバル化時代の外国人・少数者の人権―日本をどうひらくか

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  • サイズ B6判/ページ数 376p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750321530
  • NDC分類 316.1
  • Cコード C0336

出版社内容情報

人間を労働力=商品と見なす風潮のあるグローバル化への対応のなかで、外国人・少数者・移住労働者の人権問題に何が起きているかを具体的に明らかにする。多文化共生時代の日本社会のあり方を問いかけ、身近な地域社会での努力の可能性も示唆。

はじめに●西川 潤
第1部 定住外国人とマイノリティの人権尊重
第1章 日本における国際人権の課題●寺中 誠
第2章 定住外国人障害者と重層的差別――「内なる国際化」に求められる視点●金 政玉
第3章 日系フィリピーノ――外国人労働者の子どもの人権●板垣千嘉子
第4章 日本における先住民族――文化の保護から権利の確立へ●上村英明
第2部 移住労働者の労働実態と人権確立
第5章 介護現場を支える日系移住労働女性たち――外国人介護士受け入れのモデル国になるためには●小幡詩子
●コラム 移住労働者受け入れのために何が必要か
第6章 豊田市のブラジル人コミュニティと情報権●阿部 恵
第7章 日本で働くタイ人セックスワーカー――日本とタイの政策課題●ウサマール・シアンプクデー
第8章 外国人研修生――労働実態とその課題●川上園子
●コラム
 (財)中小企業国際人材育成事業団アイム・ジャパン
 スリランカ人研修生による未払い研修手当請求
 福井県・武生コンフィクソンによる不当虐待事件
 研修生による労災補償請求
 銚子・中国人研修生・技能実習生資金中間搾取事件
 香川・フィリピン人研修

あとがき
 世界的に人権状況は着実に進展している。それは、自由権、社会権から第三の人権など、人権概念の歴史的展開、新しい人権(自治権、男女同権、子どもの人権、移住労働者や先住民族の人権等々)の国際的確認に表れている。国家統制的社会主義体制の解体も情報通信革命にともなうこのような人権意識の進展の結果と、これを考えることもできよう。他方で、人権の国際基準の実施措置も、国際的には、国連の場での人権委員会や規約人権委員会、国連人権高等弁務官事務所の設置、国際刑事裁判所の発足など、また、国内的にも各種の平等委員会や人権委員会の設置や活動など、めざましく進んだ。このような人権意識と政策の展開は、これを意識のグローバリゼーションと呼ぶこともでき、グローバリゼーションのプラスの側面である。
 だが、他方で、ここ十数年の経済グローバリゼーションの進展を通じて、人間の商品化、環境破壊など、人権状況が悪化している面も残念ながら私たちをとりまくもう一方の現実である。同時に、このグローバリゼーションの反動として、各国で表れてきているナショナリズムが排外主義、人種差別主義を台頭させていることも見逃せない。
 本書におさめられた論文化と平和な社会形成のためには、今、何が必要か、を展望してもらった。
 本書の特徴は、21世紀初めの数年間、日本で構造改革、経済の開放体制が始まり、労働者開国の方向も打ち出されたグローバリゼーションへの適応時点で、外国人、少数者、移住労働者の人権問題に何が起こっているか、を具体的な実証を通じて明らかにしていることにある。つまり、「労働者開国」といいながら、それは大幅に「労働力開国」にとどまり、人間をもっぱら労働力=商品と見なす風潮のなかで、むしろ、日本の人権状況が悪化するおそれがあることを論じている。また、「上から」の開国のなかで、在日コリアンや障害者、先住民族アイヌの立場が必ずしも人権状況の改善をともなわず、おき去りになっていることもいくつかの論文によって、指摘されている。
 しかし、他方で、いくつかの地方自治体や地域で、草の根レベルの連帯意識や人権・共生意識から、積極的な地域・社会の開放が図られている現実も存在する。わけても本書では、定住外国人にとっての情報=コミュニケーションが、基本的人権の保障にとって、いかに重要かが明らかにされている。このような人権保障は、私たちの身のまわりから、地域社会のあり方の

目次

第1部 定住外国人とマイノリティの人権尊重(日本における国際人権の課題;定住外国人障害者と重層的差別―「内なる国際化」に求められる視点;日系フィリピーノ―外国人労働者の子どもの人権 ほか)
第2部 移住労働者の労働実態と人権確立(介護現場を支える日系移住労働女性たち―外国人介護士受け入れのモデル国になるためには;豊田市のブラジル人コミュニティと情報権;日本で働くタイ人セックスワーカー―日本とタイの政策課題 ほか)
第3部 日本社会をどうひらくか(川崎市の多文化教育―学校・行政・コミュニティの参加;ニューカマーの子どもの教育―母語を生かした学習支援;地方自治体をどうひらくか―神奈川に在住する外国人との共生 ほか)

著者等紹介

西川潤[ニシカワジュン]
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授、「開発、人権と平和」プロジェクト研究の指導を担当
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。