スポーツ・ジェンダー学への招待

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  • サイズ A5判/ページ数 333p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750319445
  • NDC分類 780.13
  • Cコード C0036

出版社内容情報

スポーツ分野におけるジェンダー研究はこの数年で急速に進んでいる。本書は、それらの成果を集大成し、歴史、文化、教育、身体、ムーブメント、可能性などから体育・スポーツのジェンダー構造を包括的に読み解いた初の入門書である。

序章 スポーツ・ジェンダー学のプロローグ
第1節 スポーツのジェンダー構造を読む 飯田貴子
第2節 スポーツにおけるジェンダー構造の現状を見る 井谷惠子
第3節 女性スポーツのムーブメントを問う 井谷惠子

第1章 ジェンダー・シンボルとしてのスポーツの登場――歴史
第1節 近代スポーツの発展とジェンダー  來田享子
第2節 スポーツへの女性の参入  來田享子
第3節 スポーツとナショナリズム  阿部 潔
コラム1 高等女学校――日本女性スポーツ黎明期を支える  北田和美
コラム2 ドイツ体操祭の歴史から見た女性体操のジェンダー問題  吉中康子

第2章 ジェンダーを増幅するスポーツ――文化
第1節 スポーツ・コマーシャリズムとジェンダー  平川澄子
第2節 スポーツ・メディアの現状――テレビスポーツのジェンダー分析  飯田貴子
第3節 スポーツと男らしさ  吉川康夫
第4節 スポーツとジェンダー表象  阿部 潔
第5節 女性スポーツの商品化  梅津迪子
コラム3 スポーツウェア  萩原美代子
コラム4 競技年齢とジェンダー  赤坂美月
コラム5 ロッカールームの倫理学昌吏
コラム12 性を分割する体育  橋本秀雄
コラム13 男女共習VS男女別習――男女共習体育授業は本当に必要だろうか?  佐野信子

第5章 ジェンダー再構築への挑戦――ムーブメント
第1節 女性とスポーツをめぐる国際的なムーブメント  來田享子
第2節 TitleIXの成立と30年  井上洋一
第3節 オリンピック・ムーブメントとジェンダー  田原淳子
コラム14 イスラーム女性とスポーツ――イランを中心として  荒井啓子
コラム15 「ゲイ・ゲームズ」  稲葉佳奈子
コラム16 シニア女性のスポーツ熱  工藤保子

第6章 オルタナティブなスポーツ文化の創造――可能性
第1節 ジェンダー視点から見たウォーキングブーム  高峰 修
第2節 オルタナティブな存在としての障害者スポーツ  藤田紀昭
第3節 ジュニアスポーツとジェンダー――バイアスをさらに弱めるために  近藤良享
第4節 ワールド・ジムナストラーダ  松本迪子
コラム17 オルタナティブとしての女子ボクシング  藤山 新
コラム18 車いすダンス  寺田恭子
コラム19 『ウォーターボーイズ』  谷口雅子

文献
あとがき

あとがき
 『スポーツ・ジェンダー学への招待』発刊にあたり、何より嬉しいことは、体育・スポーツ分野におけるジェンダー問題を取り扱った「1冊の書」を世に出せたことである。日本の体育・スポーツ分野において、ジェンダーが問われるようになった歴史はごく浅く、1990年代中頃以降のことである。20年以上もの蓄積がある他分野、あるいは諸外国に比べて大きな遅れをとっている。
 日本体育学会で「ジェンダー」というキーワードがはじめて登場したのは1994年で、体育社会学専門分科会シンポジウムでは伊藤公雄さん(大阪大学)が「スポーツとジェンダー」について報告された。伊藤さんはそのなかでジェンダーを「女性は子どもを産む。けれども、子どもを産むからといって、子育てや家事が女性に向いているというのは、セックスとジェンダーを混同している」と説明された。フロアにいる会員は半信半疑というありさまであったように記憶している。
 1998年に『ジェンダーで学ぶ社会学』(世界思想社)、『変容する現代社会とスポーツ』(世界思想社)、『スポーツの社会学』(杏林書院)が相ついで出版されたが、スポーツとジェンダーに関わる記述は、その一部を占めているびを分かち合いたい気持ちで一杯である。
 本書は、「スポーツ・ジェンダー学」の入門書である。そして、執筆者は体育・スポーツ研究の内外から合わせて33名にもなる。通常の書物としては異例であろう。しかし、このことは、「スポーツ・ジェンダー学」をより多くの人びとに理解してもらい、実践への広がりを持たせるという本書の企画に沿っている。ここであらためて、協力いただいた執筆者各位に感謝の意を申し上げたい。
 ところで、近年のジェンダー理論は、ジェンダー解体への道々で多様なジェンダー・トラブルを起こすことを予見している。その過程における優先課題は、人間の性を「女」/「男」というように二元論的立場で捉えることからの脱皮であると考えられている。
 しかし、本書の編集を通じて気がつくのは、その枠組みから離脱する道筋がきわめて険しく複雑であるということである。たとえば、序章のなかで、女性間の差異について配慮することを述べているにもかかわらず、編者を筆頭に女性をひとくくりにして論じすぎているように思う。このひと月ばかり、毎日のように紙面に掲載されているイラク戦争におけるイラク人への虐待問題では、米軍女性兵士が加害者として軍法会

目次

序章 スポーツ・ジェンダー学のプロローグ
第1章 ジェンダー・シンボルとしてのスポーツの登場―歴史
第2章 ジェンダーを増幅するスポーツ―文化
第3章 スポーツする身体とジェンダー―身体
第4章 ジェンダーを生産する体育・スポーツ―教育
第5章 ジェンダー再構築への挑戦―ムーブメント
第6章 オルタナティブなスポーツ文化の創造―可能性

著者等紹介

飯田貴子[イイダタカコ]
帝塚山学院大学人間文化学部教授。専門はスポーツ社会学スポーツ・ジェンダー学

井谷恵子[イタニケイコ]
京都教育大学教授、博士(学校教育学)。専門は体育科教育学スポーツ・ジェンダー学
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感想・レビュー

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katoyann

20
スポーツをジェンダー研究の観点から分析した研究書。複数の研究者によって書かれてあり、コラムも充実していて面白かった。20人以上の著者がいるため、気になったものを。「イスラーム女性とスポーツーーイランを中心として」というタイトルのコラム。「クルアーンに基づいたイスラム法を国内法としている」イランでは、ヴェール着用が義務付けられ、人前に肌をさらすようなスポーツウェアは本来は憚られる。そのため、女性に限定された大会が開催されている。戒律を守りながらスポーツに参加することが彼女たちの誇りになる。文化相対主義!2021/06/03

jjm

7
異常な遺伝子蓄積を防ぐため死が存在し、死が存在するから多様性のため性が生まれた。生物学上の性別が問題になるなら、性別を分けずに競技をするしかないのではないか(既存の競技が生物学上の女性に元々不利ということはあるかも)。一方でそもそもなぜ競わないといけないのか。フロイトによるとそれは闘争本能。一番よいのは本書でも述べられているジェンダーフリーなスポーツイベント・ジムナストラーダ。ただ勝敗がつかないため商業主義とは相容れない。女性の性的画像問題も男性の意識改善の他に、商業的な思惑も絡み難しいのだと感じた。2021/06/16

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