東アジア史のなかの日本と朝鮮―古代から近代まで

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  • サイズ B6判/ページ数 310p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750318851
  • NDC分類 210.18
  • Cコード C0021

出版社内容情報

日本列島と朝鮮半島を舞台にしてくり広げられる国家形成の動きとその共存・対立、そして国際的な秩序醸成の流れを語り、中国という欠くことのできないもう一つの要素を視野に入れながら、東アジア世界独特の政治的メカニズムの歴史を説き明す。

1 日本列島の原始社会と朝鮮半島
第1章 日本列島の住民
(1)南方的要素と北方的要素 (2)縄文人と弥生人 (3)朝鮮半島の稲作遺跡 (4)渡来の波
第2章 金印の世界
(1)楽浪・帯方郡と東夷諸族 (2)倭の奴国王 (3)親魏倭王 (4)九州か畿内か

2 倭の王権と朝鮮三国――虚像と実像
第3章 謎の四世紀と七支刀銘文
(1)空白の期間 (2)百済献上説 (3)百済下賜説および東晋下賜説 (4)百済=倭対等説
第4章 広開土王碑文の研究
(1)「渡海」の主語 (2)参謀本部 (3)原石拓本の探求 (4)前置き文
第5章 「任那日本府」の問題
(1)倭の五王 (2)「己巳年の史実」 (3)大加耶連盟の動き (4)「日本府の滅亡」

3 日本の成立と新羅・渤海――理念と現実
第6章 飛鳥仏教の背景
(1)仏教の公伝 (2)法興寺の建立 (3)遣隋使の派遣 (4)二つの弥勒菩薩像
第7章 大化の改新と白村江の戦い
(1)唐の建国と東アジア (2)改新政府の外交政策 (3)統一新羅と渤海 (4)「倭」から「日本」へ
第8章 東夷の小帝国
(1)「天皇」という称号 (2)『
(1)国交の回復 (2)家康の国書 (3)改竄の発覚 (4)「通信の国」
第15章 朝鮮通信使
(1)盛大な饗応 (2)「御礼」「入貢」 (3)「国王」か「大君」か (4)新井白石の改革
第16章 征韓思想の源流
(1)「君に非ず臣に非ず」 (2)自尊意識の特徴 (3)皇国意識の昂進 (4)吉田松陰の征韓論

7 近代日本の朝鮮侵略
第17章 明治維新と征韓論争
(1)書契問題 (2)朝廷直交論 (3)平和遣使か武力征韓か (4)「名分条理」 (5)江華島事件
第18章 日清戦争と朝鮮
(1)日本と清国の対立 (2)壬午軍乱と甲申政変 (3)内政干渉と軍備拡張 (4)開戦への道 (5)「文明と野蛮の戦争」
第19章 日露戦争と韓国併合
(1)大韓帝国 (2)日露戦争の性格 (3)保護条約の強制 (4)反日義兵「戦争」 (5)韓国の「廃滅」
第20章 植民地支配
(1)「武断政治」から「文化政治」へ (2)同化主義と日鮮同祖論 (3)「皇国臣民化」政策 (4)戦争への動員 (5)解放と分断

参考文献
あとがき
年  表
索  引

 ところで、日本における朝鮮認識は、本書でふれたとおり、古代以来の蕃国観に彩られてきました。そのうえさらに、近代にいたっては、朝鮮の歴史を自主性がなく他律的であり、発展性がなく停滞的であることを強調する見方が研究を規定するようになりました。「だから日本が近代化をすすめてやるのだ」として、意図的ないし無意識的に植民地支配を正当化する議論として機能したのです。その反省にたって、対象を内在的かつ発展的に理解しようとした第二次大戦後の研究は、朝鮮の歴史展開の豊かで多彩な姿を明らかにしてきたといえます。ただ、そこでは、近代になって構想された民族や国家の枠組みが「内在」すべき自明の単位として過去に投影され、西欧的な近代社会を到達点とする「発展」の理論が暗黙の前提とされるなど、さまざまな限界が指摘されていることも事実です。
 「東アジア世界」や「東アジア文明」に着目することは、そうした研究を再検討し、限界をこえるための方法を模索する試みのひとつといえます。また、悠久不変の「日本」や「日本文化」を周辺の世界から孤立的にとらえ、その歴史の固有性や優越性をことさらに強調するとともに、明治以降の歩みをもっぱら近代化の成功物語と描「近代日本の朝鮮侵略」がアヘン戦争以降の近代に相当し、東アジア世界の動向もだいたい、こうした区分でおさえられるものと思います。
 日本列島や朝鮮半島に生起した国家はこの国際秩序に参加して中国王朝と関係を結ぶとともに、それに規定されつつ相互の交渉を展開しました。朝貢・冊封体制は支配・従属の形式の関係であると同時に、一面において平和と安定のシステムとして機能するものでありました。ただ、この体制の中において周辺諸国はそれぞれに自らを中心にすえた世界秩序の構想を生み出してもおり、日本の場合、早期に『日本書紀』などに定式化された日本中心の理念が、その後の歴史過程において執拗に保持されつづけたところに特徴があるといえます。そして、それが朝鮮に対する蔑視意識と密接に結びついていました。
 それぞれの副題に、2「虚像と実像」、3「理念と現実」、4「自閉と憧憬」、5「敵対と融和」、6「蔑視と交隣」等々と示したとおり、日本における朝鮮問題は相反する二つのベクトルに規定されているかのごとくです。このどちらに力点をおいてとらえるかによって、敵対と蔑視か善隣と友好かという具合に、日朝関係のイメージはおおきく変わってみえることになり

目次

1 日本列島の原始社会と朝鮮半島
2 倭の王権と朝鮮三国―虚像と実像
3 日本の成立と新羅・渤海―理念と現実
4 平安・鎌倉時代の日本と高麗―自尊と憧憬
5 室町時代・織豊政権期の日本と朝鮮―敵対と融和
6 江戸時代の日本と朝鮮―蔑視と交隣
7 近代日本の朝鮮侵略

著者等紹介

吉野誠[ヨシノマコト]
1948年、千葉県生まれ。東京大学文学部東洋史学科卒業ののち同大学院博士課程修了。現在、東海大学文学部アジア文明学科教授
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感想・レビュー

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先史から現代までの中国ー朝鮮半島ー日本の歴史。印象に残ったのは、朝鮮半島国家の独立心の高さとしぶとさ。例えば、元の攻撃に30年間も抗っている。そして、その30年は鎌倉幕府が防衛体制を整えるために重要だったというのが著者の考え。さらに示唆に富むのが朝鮮との外交を通した日本と中国のメンツ争い。朝鮮王の親分は中国皇帝だから、朝鮮王と日本のトップが外交してしまうと、日本も中国皇帝の子分になってしまう。だから日本のトップには直接政治に関わらない天皇が必要だった。周辺国の影響を考えることでさらに日本史は面白くなる。2017/04/22

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