出版社内容情報
グローバリゼーションのもと、黄海・日本海・東中国海・南中国海を包含する地域での経済交流の堅密化と連帯意識から地域安定化の必要性をとく。かつて提唱されていた「環黄海経済圏」をこえた「東アジア地中海経済圏」を提起した経済学者、地域研究者必読書。
第1章 中・韓経済交流の回顧
1 輸出市場の変遷
2 相互補完性高い中・韓経済
第2章 環黄海経済圏の形成
1 直接取引移行のための条件整備
2 香港経由間接貿易の急増と限界
3 日本経由間接貿易と事実上の直接取引
4 韓国の対中経済交流と「西海岸地域開発基本構想」
5 「環黄海経済圏」の形成
第3章 日本経済の構造変化と地方の国際化
1 日本経済の構造変化と国際分業の再編
2 「東アジア経済圏」の内実
3 外資依存型工業化と通貨危機
4 地方の国際化と地方間経済交流
第4章 地方間経済交流の進展と東アジア地中海経済圏
1 海峡経済圏・環黄海経済圏・環日本海経済圏
(1) 日韓海峡経済圏の成立
(2) 環日本海経済圏と環黄海地域
2 東アジア地中海経済圏の形成
(1) 「東アジア地中海経済圏」の呼称
(2) 東アジア地中海経済圏とゼロエミッション
(3) モーダルシフトと東アジア地中海経済圏の実体化
3 規制緩和と地方版自由貿易協定
(1) 急増する自由貿易協定
(2) 地方版自由貿易協定の具体像
エピローグ――東アジア地中海の時代
数えてみると25年も福岡に暮らしている。余所者を温かく受け容れてくれる「もてなし文化」に魅せられたからであろうか。
福岡が余所者に温かいのは、その置かれた地理的条件に負うところが大きいようである。上海は東京より近いし、釜山にいたっては僅々200キロメートル、まさに指呼の間にある。このように東アジアに近い環境で暮らしていると、東京より東アジアに親近感を覚えてしまうから不思議である。『漢書』の「地理志」に出てくる「楽浪海中に倭人有り」の「倭人」は、日本人ではなく、朝鮮半島や北部九州地域の海洋民族だったのではないかと考えたりもする。
しかし、国境に妨げられない地方住民の自由な往来は近代国家の成立とともに閉ざされてしまい、代わって「国家」や「民族」の利害を背負った「直流(交流ではない)」が始まることになった。国民経済の成立も、地方を経済的に自己循環のメカニズムに組み込んでしまい、かつてのような近隣地域との自由な経済交流を阻害してしまったのである。
このように考えると、国境に妨げられない地方住民の自由な交流を蘇生させたいとの思いが募ってくる。ボーダーレスといわれ、国境があたかもなくなってしまったかのようなモ
目次
第1章 中・韓経済交流の回顧(輸出市場の変遷;相互補完性高い中・韓経済)
第2章 環黄海経済圏の形成(直接取引移行のための条件整備;香港経由間接貿易の急増と限界 ほか)
第3章 日本経済の構造変化と地方の国際化(日本経済の構造変化と国際分業の再編;「東アジア経済圏」の内実 ほか)
第4章 地方間経済交流の進展と東アジア地中海経済圏(海峡経済圏・環黄海経済圏・環日本海経済圏;東アジア地中海経済圏の形成 ほか)
著者等紹介
小川雄平[オガワユウヘイ]
1944年滋賀県生まれ。1974年大阪市立大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。現職、西南学院大学商学部教授。中国吉林大学東北亜研究院兼任教授。丹東経済研究所名誉所長
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