子どものエンパワメントと子どもオンブズパーソン

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 306p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750317762
  • NDC分類 369.4
  • Cコード C0036

出版社内容情報

子どもの権利擁護のための公的第三者機関「オンブズパーソン」を全国に先駆け設立した川西市で、事務局を務めた著者が、オンブズパーソンの歴史や定義を解説。約4年間の現場経験から、民間と行政の連携・対話による子どもと大人の相互関係の創り直しを提案。

序 章 もう一つの「意味ある他者」
(一)子どもからの相談
(二)オンブズパーソン活動の原則
(三)子どもの代弁と相互関係のつくりなおし
(四)子どもの話を聴くということ

第1章 原型としての「市民の代理人」―オンブズマン
一 オンブズマン制度の基本概念
(一)用語としてのオンブズマン
(二)オンブズマン制度の定義
(三)オンブズマン制度の要件と基本構造
(四)オンブズマン制度の類型
二 日本におけるオンブズマン制度の導入
(一)概観および国での検討
(二)地方自治体での制度化
(三)民間での取り組み
(四)制度導入における特徴と傾向
三 国内人権機関とオンブズマン/子どもオンブズパーソン
(一)国内人権機関とオンブズマン制度
(二)国内人権機関のもつ独自性
(三)国内人権機関と子どもオンブズパーソン制度

第2章 子どもオンブズパーソンとは何か―その独自性をめぐって
一 子どもの固有性と子どもオンブズパーソン
(一)北欧の子どもオンブズパーソンからの報告
(二)子どもの固有性にかかわる「外部システム」
(三)子どもの固有性をめぐる文脈
二 子どもの権利審議における主たる論点
(二)条例案の一部修正と可決
(三)自治体の責務としての子どもの権利実現
四 制度運営における独立・第三者性の確保
(一)オンブズパーソンの任免と自律権
(二)事務局の位置付けと予算
(三)調査相談専門員の位置付けと役割
(四)情報の扱い―情報検索・個人情報保護・情報公開

第4章 子どもオンブズパーソンの活動と子どものエンパワメント
一 子どもオンブズパーソンの相談・調整と調査の活動
(一)相談から始まるオンブズパーソンの活動
(二)調査実施へのアプローチ―申立てと自己発意
(三)調査活動の特徴と勧告・意見表明
(四)子どもの「解決イメージ」とモチベーション
二 子どもオンブズパーソン制度からみえる子どもたちの現状
(一)相談からみえる子どもたちの現状
(二)「学級崩壊」のなかでみえる子どもたちの姿
(三)トランスフォーマティブな参加に向かう子ども

終 章 子ども自らの回復をめざして
 註釈
 引用文献
 参考文献
 資料――川西市子どもの人権オンブズパーソン条例

 長崎で一二歳の少年が四歳の男児を誘拐して殺害――というニュースが、いま伝えられています。同時に、メディアをとおしてその少年の親にいらだちをぶつけ、乱暴に難詰することで、自らの責任を全うできると思うかのような、おとなの言動も報じられています。さらにインターネットでは、匿名者によって少年の肖像がばら撒かれているといいます。
 このようなありさまから想起されるのは、やや飛躍してしまいますが、「世界は人間なしで始まったし、人間なしで終わるだろう」という、レヴィ=ストロースの言葉です。「人間中心主義」の奢りへの諌めです。ただ、私たちは「人間」という言葉に、「子ども」をどのように包摂し、また受容してきたでしょうか。私たちの社会が、「子どものため」という観念だけで、子どもなしで進もうとするならば、「人間なしで終わる」という言葉も、やがて現実味をおびてくると思えます。だれかが世界の中心ではなく、どこかに世界の中心があるのでもなく、自己と他者と、そして世界との相互関係のなかにおいて、ともに生かされ、生きるものとして、子どもとのかかわりをつくりなおしていくことが、私たちおとなには求められていると感じます。
 さて、本書は、会いがあり、貴重な示唆と、そして励ましとをいただいてきました。あらためて、深甚の感謝を申し上げる次第です。

おわりに 吉永省三

内容説明

本書の目的は、子どもとのかかわりを何らかもつ人たちに、「子どもオンブズパーソン」を知ってもらうことです。子どもが子どもであることで、人間としての尊厳を自ら回復していくことができるように、そして子どものエンパワメントのために、どんな支援をおとなたちはできるのか、一緒に考え、実行していくきっかけになる本。

目次

序章 もう一つの「意味ある他者」
第1章 原型としての「市民の代理人」―オンブズマン
第2章 子どもオンブズパーソンとは何か―その独自性をめぐって
第3章 川西市における子どもオンブズパーソンの制度化
第4章 子どもオンブズパーソンの活動と子どものエンパワメント
終章 子ども自らの回復をめざして

著者等紹介

吉永省三[ヨシナガショウゾウ]
1952年生まれ。同志社大学文学部卒業、川西市立中学校教員、大阪大学大学院人間科学研究科修士課程修了。川西市子どもの人権オンブズパーソン事務局(川西市生活・人権部人権推進室)主幹、(併任)川西市教育委員会生涯学習部人権・地域教育推進室人権教育担当主幹
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。