内容説明
昭和戦時期の議会は、政党政治の危機のなか既成政党が多数派を維持し、大きな政治力を発揮した。無能、無力な議会というこれまでの評価を見直し、戦時議会の歴史と限界を読み解く。混迷する現代政治を考える上で最適。
目次
太平洋戦争初期の戦時議会
戦局の悪化と議会
戦時議会の終焉とその後〔ほか〕
著者等紹介
古川隆久[フルカワタカヒサ]
1962年生れ。’92年東京大学人文科学研究科博士課程修了。博士(文学)。’96年横浜市立大学国際文化学部講師を経て、現在、横浜市立大学国際文化学部助教授。主要著書に「昭和戦中期の総合国策機関」(’92年)「皇紀・万博・オリンピック」(’98年)など
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感想・レビュー
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nagoyan
1
優。議会人はかならずしも軍部のいいなりではなかった。政民系の主流派は社会主義者、ファシスト的な「革新」派らと競合しつつも、それらが支持する近衛や軍部とときに対立し、ときに協調しつつ、終戦を迎えた。既成政党グループは、多元的権力構造の旧体制下にあって、良くも悪くも、そのような権力主体の有力な一つであり続けた。2011/08/11
naftan
0
通常政党政治の否定につながったとされる昭和一〇年の天皇機関説事件の結果、政府の公式的憲法解釈となった国体明徴論は、かえって独裁政党の存在を否定し議会を唯一の国民参政機関とする解釈さえ可能にした。しかもこの憲法は衆議院選挙における自由立候補や自由投票の原則も規定していた(p.249)/議会主流派はファッショと呼ばれるのを嫌がってる。あくまで戦時体制の延長であって、この機会に政府に協力し恩を売っておくことで、戦争が終われば政党政治を復活させる腹積もりであったらしい。2011/06/16
中将(予備役)
0
戦争を前提とした時勢の中でも、衆議院の政党人が「戦時体制」を骨抜きにし、政府権力の発動を「戦時立法」に封じ込めるなど活発に活動していたことが詳細に述べられていた。政府に要求を飲ませる明治時代の議会も興味深かった。ファッショ寄り・反ファシズムとも簡単に割り切れないのが政治の駆け引きらしい。談合的な日本の政治文化が、如何に議会が強くとも憲政に馴染まなかったと結論する本書に対して、合議が議会政治に発展する余地があるとの反論もあり得そうだ。2018/09/14