内容説明
若くして豊臣秀吉に仕え、賤ヶ岳の七本槍の一人として知られる。後年、秀吉の子秀頼の家老と徳川方の「国奉行」を兼ね、大坂の陣を前に二大勢力の板挟みとなった。苦悩する悲劇の老臣という印象があるが、歴史上の真相は果してどうか。従来の忠・不忠論にとらわれず史実を検討し、武将としてよりむしろ事務官僚的にさえ見える実像を浮彫りにする。
目次
第1 賤ヶ岳の戦い
第2 国内転戦
第3 朝鮮侵略と太閤検地
第4 関ヶ原の戦い前夜
第5 家康の覇権掌握と大坂方
第6 大坂方の状況
第7 江戸幕府の成立
第8 大坂の陣
著者等紹介
曽根勇二[ソネユウジ]
1954年生まれ。’79年東洋大学大学院文学研究科(日本史学)修士課程修了。東洋大学文学部私学科助手を経て、現在横浜市歴史博物館学芸課学芸係長。主要編著に「国家と対外関係」がある
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感想・レビュー
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鯖
9
片桐さんの息吹のようなものを感じたのは大坂城博物館の熊毛モジャモジャのごっつい鎧と琵琶湖の竹生島に今も元気に生い茂っているお手植えのモチの木。去年真田丸でミカンの手入れをする片桐さんを見ていたら、しみじみ気の毒になってしまったことよ。秀吉の死後、特に関ヶ原以降、豊臣蔵入地や検地を通じ土地支配を強めるため、徳川が且元の存在を間接的に必要とした辺りは書状に押される判としての扱いでしかなかったんだなあとますます気の毒に。彼個人は後北条や織田のように、小さくなっても豊臣が残ることをひたすらに願ってたんだろうなあ。2017/02/11
MUNEKAZ
3
「賤ヶ岳七本槍」という派手なデビューのあとは、ひたすら文官一筋の生涯が続く評伝。武功ではなく事務仕事で尽くし、世話になった豊臣家の存続を願うと同時に、自家のために家康とも主従関係を結ぶその姿は、なんだか共感すら覚えてくる。また且元ら豊臣家の人間を「国奉行」として利用しければ畿内や西国を支配しきれなかったあたりに、家康の覇権の脆弱性が読み取れて面白かった。2016/12/06
pocco@灯れ松明の火
3
大阪の陣の講座で、曽根先生自身からのオススメ本。2015/06/19