内容説明
二十世紀最大の歴史的事件はやはり第二次世界大戦であろう。結果は周知のごとく、連合国側の勝利に終わった。これは民主主義の勝利とファシズムの敗北を意味した。以後ファシズムは「負の表徴」として忌避されてきている。たしかに政治体制としてのファシズムは否定すべきイデオロギーであるが、いきおいその内部で発芽し、生育した文化までも否定する傾向にあった。このあたりでファシズムと文化の関係に改めて目をむける必要がありそうだ。これが本書執筆のモチヴェーションである。
目次
時代概念としてのファシズム
1 ファシスト政権の成立から終焉まで
2 前衛と体制
3 国家と音楽
4 映画と政治的イデオロギー
5 芸術の超越性
著者等紹介
田之倉稔[タノクラミノル]
1938年生まれ。東京外国語大学外国語学部イタリア科卒業。専攻、ヨーロッパ文化史、現代演劇研究。前静岡県立大学国際関係学部教授、現在共立女子大学国際文化学部非常勤講師
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感想・レビュー
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kthyk
17
音楽と建築に関心を持つものにとって、ドイツのナチズムとイタリアのファシズムは全く異なる。20世紀初頭のイタリア芸術は現在に通底する後期資本主義社会を批判していた。問題はファシズムはファジーな全体主義、多様な政治・哲学思想のコラージュであり、矛盾の集合体であったことにある。イタリアはドイツはともにオペラが盛んな国、20世紀初頭、全体主義的イデオロギーに支配された国。 ファシスト体制は未来派と異なり伝統的なイタリア文化を悉く否定したわけではない。プッチーニはファシスト・シンパだが、トスカニーニは反ファシズム。2021/07/03
中島直人
4
(図書館)善か悪かの二元論では決して割り切れない、イタリアファシズムと芸術家との関わり方、在り方について。さわりだけ。2023/01/23
Auristela
4
以前どこかでドゥーチェがおそろしくだだっ広いアーチ型の廊下を抜けたところにある、天井が果てしなく高い執務室に座って書類に目を通している写真を見たことがあります。ローマ趣味全開のドゥーチェに近代的な建築の理解がどこまであったのか分かりませんが、ノヴェチェントという政治と芸術が異常に接近した大衆の時代だからこその軋轢をそこに感じます。芸術家が皆国家との距離を設定しなければいけない時代に生まれる芸術というのはでも今よりパワフルだったのではないでしょうか。2018/09/26
鍵窪錠太郎
3
再読、芸術と政治は最近あまりホットなテーマではない感が有る。やはり芸術と政治については戦間期がホット。うっかり再読してしまったが2004年と14年前の本で、かつリブレットという性質上、内容が古く薄い。最低限のアウトラインしか書かれていない上、文化と範囲が浅く広い物だったので次回は最低でも新書程度の厚さの物を読みたい。2018/08/07
オランジーナ@
2
なかなかマニアック2023/03/31