内容説明
合理的思想と自然科学が波及し、「光の世紀」と呼ばれたヨーロッパの十八世紀。啓蒙主義の伝播が遅れ、真の「近代的改革」の不在がいわれてきたオーストリアでも、新思潮は確実に浸透しつつあった。啓蒙専制君主ヨーゼフ二世による「都市近代化」が人びとに与えたものは、束の間の残像などでは決してない。それは、都市の社会文化を規定する、根底的変革をもたらしたのだ。「光の世紀」が喚起した、これら社会文化史的変容の諸相を探る。
目次
「光の世紀」と啓蒙専制主義
1 改革の時代と都市の変容
2 新しい都市の文化
3 啓蒙の都市空間
4 近代的都市生活の成立
著者等紹介
山之内克子[ヤマノウチヨシコ]
1963年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院文学研究科博士課程中退。ウィーン大学精神科学部博士課程修了。専攻、オーストリア社会文化史。現在、神戸市外国語大学助教授
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感想・レビュー
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Meroe
2
マリア・テレジアとヨーゼフ2世の改革が、出版や「夜」の時間など、ウィーンの都市生活、文化をいかに変化させたか。政治事情と人々のがやがやした雰囲気が一体となってわくわく。そこでの変化は19世紀末にまたウィーンに大きな変化が起こるまでどのように受け継がれたのか、ドイツやフランスとの比較は、など広がっていくテーマ。2011/10/17
rbyawa
1
要するにハプスブルクの統治の終わり頃、フランツ・ヨーゼフの時代、彼の計画はそれ自体は理想的すぎたけれど、しかしウィーンにおいての変化は本物だったんだよ、というような大雑把な話。しかしあれだ、これは確かに規模大きいと無茶だなぁ、とこの本を読んだだけでも思う。「上から計画された都市」はしかしその後の世界のスタンダートになったとも言えるのか。2009/12/03
tnk
0
宮廷文化とカトリックの牙城であったウィーンは、マリア・テレジアやヨーゼフ2世の啓蒙主義的改革によってハード・ソフト面で改造され、合理的秩序と科学的法則性の支配する清潔で安全な場へと変貌していった。思想史的な都市史へのアプローチ。短いながら興味深い。2016/01/30
衛府蘭宮
0
バロック期から啓蒙専制期にかけてのウィーンの都市と都市民文化の変化が、お上の政策と下の自生的な動きの双方から活写されている。政治史におけるヨーゼフ2世はどうしても「最終的に挫折」したという印象がつきまとうが、彼の足跡は、都市社会と心性に不可逆的な変容をもたらすのに大きな役割を果たした。都市についての叙述から浮かび上がるヨーゼフ2世は、政治史における彼以上に印象深い気がした。2022/02/09
Omata Junichi
0
啓蒙専制君主ヨーゼフ2世により、ウィーンという中世都市が近代都市へと変貌していくさまを描いた作品。ヨーゼフ2世という個人的志向の影響が強調されすぎなきらいがあって、でもそれが前近代社会なのかもとも思ったりするところ。個人的には、公園というのがいかに近代的装置としてあるかというのを読んで、「ああそういうことか」と良くわかった。女性の話があんまりなかったように感じるのは、気のせいか読み飛ばしたせいか、それとも出版年が20年くらい前だからなのか。2020/10/04