目次
歴史学とマイノリティ研究
1 多元的共存社会とイスラーム
2 ユダヤ人交易離散共同体
3 アルメニア人交易離散共同体
4 今日の離散共同体
5 マイノリティと多元的共存社会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
更紗蝦
16
イスラーム法(シャリーア)では、非イスラーム教徒は二級市民扱いとはいえズィンミー(保護民)としてイスラーム社会に組み込まれ、自治が許されていたということをこの本で初めて知りました。かつてはマイノリティは異文化の中でグローバルに流通を担い経済を動かしていましたが、十九世紀半ばに「移動を制限しない広域帝国体制」が「領域を限定した国民国家体制」に変質していく過程でマイノリティに対する迫害が激化し、虐殺にまでエスカレートします。このようなジェノサイドは近代における国民国家体制の弱点から生じています。2015/05/07
しまりんご
4
領域国家のなかで、当然のようにマジョリティーとして生きていることが、全く当たり前のことでも自然なことでもないことに気づく。しかし著者はマイノリティーを単に弱者として捉えず、境遇に適した生活や歴史を積み上げてきたとする。さらには、多様な人々が共生する社会のあり方を模索し、ジェルバ島をその一例として挙げる。2015/05/29
三山
2
国史から除外されてきたマイノリティの存在を捉え直そうという試みの内、この本は交易離散共同体として複数の社会にまたがり交易を担ってきた人々、特にユダヤ人とアルメニア人に着目している。地域的には著者の専門領域との関係もありイスラーム文化圏がメイン。二つの交易離散共同体について語られる情報は概説的によく整えられているが、アルメニア人についての章で表記のぶれ(新ジョルファか新ジュルファか)が見られるなど、少々不安な面も。しかし今日の離散共同体として取り上げられるチュニジアのジェルバ島の記述は大変興味深い。2014/05/02
こずえ
0
ユダヤ人とアルメニア人の歴史についてかかれた本。 案外彼らの歴史は点在して教わることが多く、このように1冊ですっきり学べるのはよい