内容説明
フランス革命のなにが革命的だったのか?十数年前までなら、多くの人が、フランス革命の革命たるゆえんは、封建制を根底的に廃止して資本主義の順調な発展の条件をつくりだしたことにあると答えただろう。フランス革命はブルジョワ革命だった、と。では現在はどうだろうか?フランス革命のイメージは同じままなのだろうか?本書は、この問いに答えようとする試みである。
目次
フランス革命のなにが革命的だったのか
1 フランス命革へのまなざし
2 アンシャン・レジームの国家と社会
3 政治文化の革命としてのフランス革命
4 フランス革命とユートピア
5 フランス革命と抵抗・暴力
現在からふりかえって
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
124
L・ハント『フランス革命の政治文化』のおさらいとして読んだが、改めてこの革命の凄惨さと象徴的彩りについて考えさせられた。ユートピアや透明さを目ざして行われた数々の虐殺は、犠牲者の身体の切断や食人幻想に覆われている。そもそも前時代の絶対王制は文化に支えられつつ貴族・聖職者・ギルドとの取引に依存しており、社会の固定化が下の階層への「軽蔑の滝」を形成していたという。そうしたアンシャンレジームの政治文化に対する否定的な願望が生み出した新しい文化(シンボルや儀礼)は、王の処刑から恐怖政治まで至る所に読み取れるのだ。2019/11/10
不羈
13
現代の視点からフランス革命を俯瞰し、解釈する。このようなアプローチは非常に好みである。2014/05/16
おっとー
11
リン・ハントの政治文化論に依拠しつつ、フランス革命がもたらしたアンシャン・レジームとの断絶の様相などを描く。この革命は「自由・平等」への道を開き、特権階級の影響力を削いで国民国家の方向性を打ち出すなど、近現代に通じる価値観を創造した。しかし同時に中央と地方、教育を受ける者と受けない者など新たな断絶を生み出すとともに、残酷な処刑も横行した。自由を目指して不自由になり、平等を目指して分断を生み、平和を目指して処刑する…理念の崇高さよりも、それへの陶酔がもたらす盲目的な矛盾にこそ目を向けるべきかもしれない。2021/07/29
クサバナリスト
10
佐藤賢一『小説フランス革命』を6巻まで読んだところで、フランス革命を史実として確認するために本書読了。独裁と恐怖政治、小説ではまだ登場してない、今後の物語の大筋がみえてきた。『心の習慣』を変化させること、日本の明治維新とは全く異なる革命。小説の今後の展開も楽しみ。2015/03/16
バルジ
4
フランス革命によって齎された社会的・政治的な激変を主に前者に重きを置きつつ論じる。国王を頂点とする社団を中間に配した統治構造は革命を経て解体され、「国民」の創造によって形上では平等となったが、更にその内実を伴わせるための「心の習慣」を改造すべく様々な背作が取られることとなる。具体的には暦の改定、革命を偶像化し表象させる試み等日常生活自体が「心の習慣」を変えるべく過度に政治化されていく。その結末は恐怖政治の到来となる。後の世界史を彩る革命の原型は全てフランス革命で表出されている事がよく分かる一冊として面白い2020/10/04