内容説明
1933年のナチス政権の成立から1939年のドイツのポーランド侵攻による第二次欧州戦争勃発に至るまでの、欧州社会の激動期において、「危機」と呼ばれる節目の時期が幾度かあった。本書はその中でも、ヒトラーのニュルンベルク演説、ズデーテン騒動を経て欧州戦争必至の様相を呈した1938年の「ミュンヘン9月危機」に焦点を当てる。そして、この間、四たび持たれたヒトラーとチェンバレンの直接会談を中心に、開戦か避戦かをめぐる英独外交戦略の実像を明らかにする。
目次
第1部 モラヴスカ・オストラヴァ事件
第2部 モラヴスカ・オストラヴァ事件後
第3部 ニュルンベルク演説前
第4部 ニュルンベルク演説
第5部 ベルヒテスガーデン会談
第6部 英仏ロンドン協議
第7部 ゴーデスベルク会談
第8部 ヒトラー=ウィルソン・ベルリン会談
第9部 ミュンヘン会談
著者等紹介
関静雄[セキシズオ]
1947年9月生まれ。京都大学大学院法学研究科博士課程修了。京都大学法学部助手、帝塚山大学教養学部教授、法政策学部教授、法学部教授を経て、帝塚山大学名誉教授(近代政治外交史専攻)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
13
本書は1938年9月のズデーテン問題を巡るドイツとチェコスロバキアの軍事危機に際し、英・仏を中心とした関係国の外交交渉の行方を細部に渡って描出し、歴史の追体験を通して「歴史感覚」の涵養を試みる作品。◆目前に迫る危機を回避するために小国(チェコスロバキア)を犠牲にするか、ドイツとの戦争に巻き込まれるのか、英・仏夫々の関係者の葛藤と、対独宥和か抵抗かで揺れ動く心理を奥深く描いている。特にチェンバレンの内面描写は思わず頬が緩む。ミュンヘン会談で危機は先送りとなるが・・・◇続編が楽しみ(^^)2018/01/04
鏡裕之
2
ミュンヘン会談の手前からミュンヘン会談に至るまでのプロセスを、丁寧に明かした一冊。値段は張るが、読む価値はたっぷり。ヒトラーの危険性を見抜いている者たちは大勢いたが、その者だが政権担当側の重要人物ではなかった。間違った考えでものを見る者たちが意思決定の近くに陣取って力を発揮していた。極めつけはチェンバレン。ヒトラーの人を見抜けなかったイギリスのチェンバレン首相のアホっぷりに何度も頭を抱えたくなる。人を見抜く目がない者は一国のリーダーを務めてはならないのだろう。2018/05/16