ピエールとリュース (新装版)

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  • サイズ B6判/ページ数 124p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622072232
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

「次の停留所では、大混雑だった。すでに満員の車内へ人々は叫びながら殺到した。ピエールは人の波にもまれ、押しやられたのに気づいた。円天井の上には、町の上には、上空には、鈍い爆音。列車は発車した。…車内では恐怖の叫び「独機が来たんだよ!」…彼の手は自分にさわっていた手をつかんでいた。そして眼を上げたときに、それが「彼女」だったのを見た。」第一次世界大戦下のパリ、ドイツ軍の空爆のなか、地下鉄で出会った二人。召集をうけていた良家の息子ピエールと、生活費を稼ぐための絵を画くリュースが、結ばれることは困難であると自覚しながらも想いを募らせる。『ジャン・クリストフ』『魅せられたる魂』を執筆し、ノーベル文学賞を受賞したロマン・ロランによる、平和への願いが込められたうるわしい二ヶ月の恋物語。

著者等紹介

ロラン,ロマン[ロラン,ロマン][Rolland,Romain]
1866‐1944。フランス中部の町クラムシーに生れる。エコール・ノルマル歴史科卒業後母校およびパリ大学で音楽史を講義し演劇運動にも携る。大作「ジャン・クリストフ」(1903‐1912)はペギィ編集の雑誌「カイエ・ド・ラ・キャンゼーヌ」に連載された。スイスに滞在中第一次大戦勃発、この地で平和のために闘った。「戦時の日記」はそのドキュメントである。また戦後は反ファシズムの活動に参加。第二次大戦中はナチスに抗しながら執筆をつづけた。主著は上記のほか「魅せられたる魂」「ベートーヴェン研究」「戦いを超えて」、トルストイ、ミケランジエロ等の伝記、「フランス革命劇」連作の戯曲等がある。1916年ノーベル賞受賞

宮本正清[ミヤモトマサキヨ]
1898‐1982。早稲田大学文学部仏文学科卒業。大阪市立大学教授を経て京都精華短期大学教授を歴任。ロマン・ロラン研究所を主宰した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

108
第一次世界大戦中のパリを舞台にした恋愛小説。わずか110ページ程度の中編だが物語としての大きな力を持っていると思う。無垢な若い男女やパリの風景を美しく描くことで、戦争の残酷さを浮き彫りにしている。これを書いた時、作者のロランは初老だったそうだが、まるで20代の青年のように瑞々しい筆致で人を愛する喜びを描いていた。結末を読むと、どんな人の心も悲しみでいっぱいになるだろう。その悲しみをきちんと受け止めることで、戦争をしてはいけないという強い気持ちを読者は持つことができる。2014/06/02

syaori

58
第一次大戦下のフランスを舞台に、可憐な愛を描いた小品。ピエールとリュースが二羽の小鳥のように育くむ愛が愛らしく微笑ましいだけに、彼らが戦争により時を待たずやってくるだろう「深淵」の気配を感じざる得ないことが、未来を信じることができない様子なのが一層痛ましく感じられます。そしてそんな彼らを愛の顛末を見守るなか、ピエールの兄の言葉に深く共感しました。「もしも彼らの幸福のために」「つくすことができるなら!」 この思いが、たくさんのピエールとリュースのために、彼らが未来を信じられる世界を造る力となりますように。2019/11/20

June

21
ピエールとリュースが囁くあう言葉には恋が見え隠れする。第一次世界大戦戦時下のパリ、未来の生活は何も実現しないであろうことを自覚しながらも惹かれあう二人。ピエールは肖像画を描いてもらうためリュースの家を訪れる。お互いを求めながら、二人は注意深く、間にテーブルを挟んで手を握り合う。料理店で食事をした帰りの路地で、警報を聞き閃光を目にして、思わず身を寄せ合い唇を重ねる…その刹那に思いを馳せる。そして、戦争を伝える手段としても文学は優れていたんだと思う。2014/06/09

Hepatica nobilis

19
第一次世界大戦下のドイツ軍が目前まで迫ったパリで出会ったピエールとリュース。いつ徴兵され死地に行かねばならなくなるかもしれない絶望的な状況で、2人の苦しみや葛藤、歓びが格調高く描かれる。幾分古びた訳も、理想主義も別に苦にはならない。奇を衒っていない分直截的で、なかなか良い小編だった。2017/01/22

荒野の狼

8
1918年1月30日から3月29日までのドイツに攻撃されるフランスの2ヶ月間に、出会った若い男女の名前が表題になっている。ピエールは18歳で“子供”として描かれているが召集令状がでているので、リュースとの恋愛は、純粋だが大人のそれに近い。副題が“愛に”となっているので、戦争の悲惨さと、若い二人の愛を対照的に書いたと評価されていることが多いようである。著者のロランは、反戦行動をした平和主義者で、行動をしない人には批判的である。この本でも、ピエールの父や宗教家が戦争に協力しているのを非難している2013/01/18

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