出版社内容情報
カフカの『審判』が,恋人フェリーツェとの間で演じられたもう一つの審判の帰結に他ならないことを巧緻に曝き,権力の真の精通者としてのカフカを見事に描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
80
カフカ論といった感じの1冊になるのでしょうか。カフカとフェリーツェの関係と手紙によって読み解かれていくのは、その実生活で刻まれる時間のように思えます。作品と繋がるところがあるとするならば、身近な大切な人をも傷つけてしまうことに繋がるような気がしました。それでもこのような恋愛論が存在するのは何よりもカフカが必要としてきたことそのものと言えますね。何より『審判』が読みたくなりました。2018/05/28
Tonex
6
ノーベル文学賞作家エリアス・カネッティによるカフカ論の古典。カフカ本の参考文献でよくタイトルを見かけるので読んでみた。「謎とき『審判』」といった感じの内容を期待したら、「『フェリーツェへの手紙』を読む」といった感じの内容だった。2015/12/05
弟子迷人
3
D/Gなどに挫折した人も、これでカフカ評論に入るとよいです! 『絶望名人カフカ』の頭木さんも大推薦の、カフカ評論の白眉☆
ヤマニシ
1
「つまり小さきものへの変身がそれである。(…)この収縮によって彼は二つのものを獲得した。彼は自分が暴力にとってあまりにも微々たるものになったことによって、威嚇から消え失せ、そして暴力に至るあらゆる忌わしい手段から彼自身を救ったわけである。」(p135)2024/01/22
ゆれる
1
作家としてどうしても選択しなければならなかった伴侶という意味でカフカにとってのフェリーツェとチェーホフにとってのオリガはかなりの部分において近い存在なのではないか。気質もどこか似ている気がする。2014/07/11