出版社内容情報
死後世界の浄罪場=煉獄,その形成過程を心性的史観点から厖大な史料・文化を博捜し検証して跡づけ,中世西欧世界における浄罪思想.煉獄信仰の展開と機能を解明。
内容説明
死後世界の浄罪の場=煉獄(〈第三の場所〉)―古代ユダヤ・キリスト教以後幾世紀にもわたるその形成過程を、心性史的観点から、東西古今の厖大な史料・文化を博捜・検証して明確にあとづけ、中世ヨーロッパ世界における浄罪思想・煉獄信仰の展開と機能を解き明かす。現代〈アナール派〉史学を代表する論考。
目次
第1部 煉獄以前の死後世界(古代の想像的形象;煉獄の父たち;中世初期―教義上の停滞とヴィジョンの増殖)
第2部 12世紀 煉獄の誕生(浄罪の火;浄罪の場所〈LOCUS PURGATORIUS〉;シチリア・アイルランド間の煉獄;煉獄の論理)
第3部 煉獄の勝利(スコラ的体系化;社会的勝利―司牧と煉獄;詩的勝利―『神曲』)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中村禎史
1
死後に天国に行くのか或いは地獄かを決める最後の審判までの間に魂が過ごす場所、「煉獄」がキリスト教に如何に誕生し定着したかを語る。 アウグスチヌス初め古代から中世盛期の聖職者の思想、死後の世界についての夢物語からダンテの「神曲」に至る文学作品等を史料とする。 生前に犯した罪を償い切れなかった魂は煉獄で火によって浄められる。その罰は現世に於けるどんな試練よりも過酷だが、生者達の「とりなしの祈り」によって緩和出来るとされて、信者の心情に沿っていた。一方、その量刑を左右したとされる教会の支配力拡大にも貢献した。2020/01/08
ich_y
0
名著。映画「薔薇の名前」のエンディングロールで名前を見つけて少し感動した。