出版社内容情報
アーレントの主著『精神生活』の書かれざる第三部「判断作用」へのアプローチ。カント『判断力批判』を政治哲学の書として読み解く。編者の「解釈的試論」を付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
8
自分や他人の趣味の良し悪しを云々できるか。趣味(テイスト)は味覚から来ている。味覚や嗅覚は知性ではなく感情に働きかける。反省を受けつけない。嫌いな食べ物を説得によってうまく感じさせることはできない。美的判断もまたこれに近い。好きだから好き、嫌いだから嫌いとしか言いようがない。だが政治的意見も確固とした根拠を欠く。趣味を云々できないのであれば、政治的意見も評価することができない。そうなれば政治的意思統一は不可能となり、後は数の力で押すか暴力・カネによる操作しかない。言論が政治において果たす役割は限られる。2021/05/14
hakootoko
7
初めて有名な哲学者の解説ではない、翻訳を読んだ。とはいえ、本書はカントの解説だが。『判断力批判』を中心に、他の仕事も参照しながら、カントの政治哲学を描いてみせる。政治とはなにかではなく、哲学や言論そして注視者である我々は、政治に何ができるだろうかと問う。結論は、出来事に意味づけをすることであるという。なんだか、何もできないという感じもする。しかし、考えてみれば、後世の政治に多大な影響を及ぼした、歴史書や哲学書はあるだろうし、何気ない会話なんかも政治に影響しているはずだ。それらが、我々の前提となるのである。2020/08/31
hakootoko
3
講義録のみ。Spectatorsについて。2020/08/25