出版社内容情報
ギリシア悲劇,神話,宗教,儀礼等における供犠の意味・役割を解明し,構造人類学・精神分析学を批判的に検討しつつ,我々文明の根底にひそむ「暴力」を抉り出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
11
デュルケムと同じく、ジラールは宗教的なものの起源を社会に置く。しかしその起源は集団陶酔ではなく共同体を破壊する暴力。差異の無化は統合ではなく暴力の連鎖を生む。一人のスケープゴートを満場一致の暴力で殺害すること、更にその事実を神話によって覆い隠すことによってのみ、暴力は共同体内部から追放され、平和がもたらされる。その代償は自らの内にある暴力を超越的なものとする自己欺瞞から抜けださないこと。ギリシア悲劇から得られたこの理論は、民族誌の謎を解き、またフロイト精神分析や現代社会の法秩序まで神話の領域に収めてしまう2020/07/10
梟をめぐる読書
2
おそろしく読みづらかった本。古代社会では暴力の感染を鎮めるものとして「贖罪の山羊」(生贄)があり、それはときにケガレ(父殺し、近親相姦)を引き受けた王=権力者が殺害されることでも果たされていたが、やがて社会が成熟すると王=権力者は身代わりの命を差し出すことで生きながらえるようになり、現代では法制度に託されるようになった……という流れまではなんとか理解できたものの、フロイトやレヴィ・ストロースを脱構築的に読み込んでいくあたりでしっちゃかめっちゃか。物語的な応用も効きそうで、権力者論としては愁眉だと思う。2011/07/14