内容説明
西暦2000年に生誕500年を迎えるカルロス5世は、各地域の多様性を尊重しながらも、統合された超国家的な共同体を目指す「ヨーロッパ連合」の歴史的基盤をつくるうえで、先駆的な役割を果たした君主であった。彼は、カトリック・ヨーロッパを、新興プロテスタント勢力と西進するイスラム勢力から守り抜くために東奔西走しながら、栄華を極めた皇帝の地位を晩年になって自ら退き、スペインの僻地にあるユステ修道院に引きこもってしまった。本書は当時の史料を丹念に追いながら、この謎の引退劇を探り、ハプスブルク帝国の隆盛と衰退の兆しをともにはらんだ帝国継承の経緯とその意味を明らかにする。
目次
第1章 カルロス五世の世界帝国
第2章 ブルゴーニュ公爵位からの退位(1555年10月25日)
第3章 旅立ち―ユステ修道院への道(1556年8‐11月)
第4章 仮寓生活―ハランディーリャにおける十二週間(1556年11月‐1557年2月)
第5章 ユステ修道院における隠遁生活(1557年2月‐1558年9月)