出版社内容情報
【全巻内容】1 ヘンリー六世第一部/2 ヘンリー六世第二部/3 ヘンリー六世第三部/4 リチャード三世/5 間違いの喜劇/6 タイタス・アンドロニカス/7 じゃじゃ馬ならし/8 ヴェローナの二紳士/9 恋の骨折り損/10 ロミオとジュリエット/11 リチャード二世/12 夏の夜の夢/13 ジョン王/14 ヴェニスの商人/15 ヘンリー四世第一部/16 ヘンリー四世第二部/17 から騒ぎ/18 ウィンザーの陽気な女房たち/19 ヘンリー五世/20 ジュリアス・シーザー/21 お気に召すまま/22 十二夜/23 ハムレット/24 トロイラスとクレシダ/25 終わりよければすべてよし/26 尺には尺を/27 オセロー/28 リア王/29 マクベス/30 アントニーとクレオパトラ/31 コリオレーナス/32 アテネのタイモン/33 ペリクリーズ/34 シンベリン/35 冬物語/36 テンペスト/37 ヘンリー八世
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
118
4大悲劇のひとつ。イアーゴの口車に操られてあまりにも無能なというべきか単細胞というべきか、まるごと単純に信じ込むオセローが実に「あはれ」である。経済学における「完全競争」が荒唐無稽であると同じようにオセローの反応は実に純粋に「荒唐無稽」であった。これも最後の修羅場への長い導入部であると思えば、シェークスピアの意図通りに読者ないし観客は有無を言わさず誘導されるわけである。悪役のイアーゴが主役のオセローを完全に食って足腰立たずの状態にしてしまったまさにシェイクスピア会心の名作である。2023/12/04
ehirano1
64
ロドリーゴー「・・・だけどどうしようもないんだ、おれの性格では。」、イアーゴー「性格!そいつは不正確だぜ!人間、これこれの性格でございますと言ったって、おのれ次第でどうにでもなるのさ(p50)」、と。この“巧さ”には膝をバンバン叩いて呻ってしまいました。2017/11/18
藤月はな(灯れ松明の火)
33
シェイクスピア四大悲劇の内、この作品だけは今まで読んでいなかったのでやっと、読むことにしました。「嫉妬は緑色の眼をした怪物」という一文が強烈な悲劇。でもその根底にあったのはどんなに実力があり、理解者や高潔な気品があっても「黒人」というだけで差別された人間が疑心暗鬼にならざるを得ない過程だったのではないか。主人だとしても征服者である白人に仕えることは、オセローの「一人のムーア人」であり、武人としての名誉を永遠に損ねているという思いがあったのではないだろうか?男から娼婦呼ばわりされる女達が気の毒過ぎる2016/06/30
きいち
32
嫉妬に狂うオセローが愚かすぎてわけわからないけれど、その源のイアーゴーの動機も男の嫉妬、不自然さが気づかれないのは彼の普遍性によるものなのかしら。でもなんだか浅く感じてしまう。いまこの二人演じるとしたら大変だろうな。◇好きだったのは、イアーゴーの妻、デズデモーナに親しく接するエミリア。嫉妬は理由があるからじゃない、ただ嫉妬深いから嫉妬するんだ、とか、貞淑に対するプラグマティックな姿勢は全編の価値観を相対化してしまう。こういうキャラをちゃんと配しているあたり、シェイクスピア、流石。2019/08/11
スズコ(梵我一如、一なる生命)
20
最後に向けての盛り上がりが4大悲劇の中で一番面白かった。イアーゴは、本物の悪魔、悪い運命の輪のような存在。存在そのものが悪であれば、その吐く言葉が多少真実を含んでいても、道理に叶っていても、全てを悪巧みの方へと転がしていく。そんな夫を持つエミリアは現実的で賢く、決して良心を失わないところに、二人が夫婦としてあれる性格の対極性があるのか。一方、デズモデーナはただ天使のような純粋無垢、オセローも同じように無垢で嫉妬に翻弄されており、これは夫婦たる同属性か。男の嫉妬が一番醜いと言うけれど、イアーゴは本当そう。。2017/09/10