出版社内容情報
野生の祖先種には見られない栽培植物(作物)の形質の多様性は栽培により作られた。そして、人間との関わりの違いで作物ごとに特徴がある。本書では、野生植物の順化や栽培の下での植物の進化の過程や仕組みを解明。
内容説明
本書は、エルサレムのヘブライ大学農学部で行なわれた「作物の進化について」の講義を元にして書いたものである。近年は、作物と野生種の交配を意識的に行なうようになり、各種の遺伝資源が作出されている。栽培のもとでの進化の大きな要因の一つに遺伝的浮動があり、経済的に重要視されない形質、つまりDNAマーカーなどの多様性は、野生種に比較して栽培種には少ない。栽培のもとでの進化は、人と自然の成せる業であり、作物ごとに進化の特徴がみられる。ある作物は、植物学上の「科」の一員にすぎず、多くの作物がそれぞれの「科」に属し、それらが人類に豊かな食料資源を提供している。ある作物は、発祥の地域を中心とした小さな領域で、またある作物は広い地域で順化(栽培化)され広く拡散している。人とかかわる利用の面でも、ある作物は一つの目的のために、またある作物は多様な目的により開発され利用されている。進化・改良の過程では、あるものは形態的・生理的に激しい変化を受けたものもあれば、いまだに祖先種とあまり変わらないものもある。本書では、このような栽培に伴う植物進化の主要な側面を、7章に分け記述している。
目次
第1章 農業の起源
第2章 栽培による多様性の増大
第3章 栽培下での遺伝的多様性の減少と維持
第4章 栽培による種分化
第5章 雑草とその進化
第6章 作物の進化
第7章 将来の作物改良のための遺伝資源