出版社内容情報
20世紀最大の批評家ヴァレリーにおける〈ナルシス〉のテーマを軸に、ヴァレリー的主体のありようを、伝記的な事象にも触れながら多面的に描き出す。
内容説明
20世紀最高の詩人・批評家ヴァレリーにおける“ナルシス”のテーマを主軸に、書く主体としてのヴァレリーの肖像を、その生涯の出来事にも触れながら、明晰な論理と透徹したエクリチュールで多面的に描き出す、白熱の論考。
目次
第1章 ナルシスの出発―初期ヴァレリーの想像的世界
第2章 嵐について―ヴァレリーの危機のころ
第3章 境界について―『ムッシュー・テスト』を中心に
第4章 ある対話について―ヴァレリーとマラルメ
第5章 ふたたび嵐について―『若きパルク』を読む
第6章 ナルシスの変貌―『ナルシス断章』を中心に
第7章 光と暗黒について―『ナルシス“終曲”』と『天使』
著者等紹介
清水徹[シミズトオル]
1931年生まれ。東京大学仏文科卒。フランス文学者、文芸批評家。ポール・ヴァレリー、ステファヌ・マラルメなどを専攻、NRF以降の批評・思考の展開、ブランショ、フーコーなどの精細な読解・紹介でも知られる。著書に、『書物について』(読売文学賞、歴程賞受賞)など、訳書にM.ビュトール『時間割』(クローデル賞)など
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感想・レビュー
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koala-n
3
近現代のフランス文学の篤実な紹介者であり、研究者である著者の半世紀にわたるポール・ヴァレリー研究の結果であり、非常に滋味深い論考。ヴァレリーの詩的想像力の世界を「ナルシス幻想」を経糸に、難解なヴァレリーの詩やカイエ、そして現実での生活を緯糸にして立体的にこの大詩人/思索家の姿を浮き彫りにしている。著者の独特の柔らかくしなやかな文章は、この詩人を論じるのに大きく益しており、この文体がなければこれだけの成果を上げることはできなかっただろうと思われる(もちろん資料の確かな読みを基礎にしてだが)。素直に賛嘆。2013/03/22