出版社内容情報
加藤周一は、死の直前まで時代を見つめ、鋭い知性と明晰な言葉でその意味を探り、展望を示し続けた。単行本未収録分を含む決定版。解説 小川和也
内容説明
二十世紀日本を代表する知識人・加藤周一が四半世紀にわたって朝日新聞に連載した時評エッセイ。とりあげられる様々な出来事は、より大きな射程と普遍性を持って多様な角度から位置づけられ、それらが、巧みな構成と警抜な比喩でつづられる。最終巻となる本巻には、2001年から加藤の絶筆となった2008年7月掲載分までを収めた。単行本未収録分を含めた完全版。
目次
1 2001
2 2002
3 2003
4 2004
5 2005
6 2006
7 2007
8 2008
著者等紹介
加藤周一[カトウシュウイチ]
1919‐2008年。東京生まれ。東京大学医学部卒。戦後、多彩な執筆活動を展開。カナダのブリティッシュ・コロンビア大学をはじめ、ドイツ、イギリス、アメリカ、スイス、イタリアの大学や、上智大学、立命館大学などで教鞭をとる。2004年、平和憲法擁護の「九条の会」の呼び掛け人となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はっせー
95
かなり勉強になった! 自分が生きていた時代の事件や出来事を加藤周一さんの目線で鋭く切り込んでいた。そして広い分野の芸術なども理解している。この幅広い知識が裏打ちされているため、どの文章を読んでも綺麗に思ってしまう。加藤周一さんは亡くなる5ヶ月前までこの作品を作ってきた。これほどの熱量をもってこの作品に向き合っていたことがわかった!他の作品も読んでみたい!2019/03/21
呼戯人
18
加藤周一の絶筆、「さかさじいさん」を含む夕陽妄語の完全版。あるときは、オランダ17世紀の光を捉えた画家たちを論じフェルメールやクロード・ロランを賞味する。またあるときは、ギリシア悲劇アンティゴネ―を読み、彼女がこの世を去るときに呟く生きる喜びとの別れの悲哀に涙する。そして、イラク戦争の悪を暴き、虚偽と暴力に満ちたこの戦争に全身全霊で反対する。クレマンソーの伝記を読みながら政治には現実主義に理想主義が混じって居なければならず、どちらが欠けても政治にならないことを解く。日本の失ったものは限りなく大きい。2018/11/12
風に吹かれて
14
「ならず者」が核による報復を無視して核ミサイルを打ち始めたら、どうなるのだろう。氏は、核爆弾や憲法の問題を時事的な事件に即して、何度も述べる。何度でも述べなければならない重大な問題だからだろう。核を持てる者と持てぬ者の不平等、持てる者の間でもその数による不平等、それらが核攻撃の可能性を高める、と言う。私は最近知ったのだが、潜水艦から発射されるミサイルを防ぐことは極めて難しいそうだが、だとすればなおのこと、核を持たない外交の力を世界が信じる以外に未来はないのではないだろうか。2016/09/13
そうげん(sougen)
5
談論風発、議論百出というふうに、多様な意見が乱立しながら、空論も暴論も含めて立ち上がるのがよいと思っている。「書くべきものを書く」自身の主張を繰り広げにくい空間の窮屈さが、相手をバッシングする行為に拍車をかける。抑圧された怨念の発露として、邪まな感情が暴発する。詳細な論述から逃れる作法がいまも幅を利かす。このような状況下にあっては、クリティカルなものは表では求められないだろう。それでも多少耳を傾け、読んでおこうと思える本著のような作品は積極的に体験しておきたい。2018/06/23
aaboo
1
夕陽妄語を加藤さんにもっと書いてほしかった。 2021/03/29