内容説明
一葉が小説と同様の情熱で綴った日記のうち、その生涯を語るうえで欠かせない主な出来事を詳細な脚注・参考図版とともに収録。また文庫版では初となる書簡も併せて掲載した。明治という時代のなかで、書くことを通じて自己実現を図ったひとりの女性作家の内的世界を十分に味わえる画期的な作品集。資料篇として、緑雨、露伴のほか半井桃水、平塚らいてう、長谷川時雨、幸田文らの回想記・作家論も付す。
目次
日記(抄)
書簡(抄)
資料篇―回想・作家論
著者等紹介
樋口一葉[ヒグチイチヨウ]
1872‐1896。東京の府庁構内長屋に生まれる。本名奈津。幼いころ草双紙を読み、和歌を学んだ。十九歳のとき半井桃水に師事して創作を始め、第一作「闇桜」、ついで「うもれ木」によって注目される。下谷龍泉寺町で荒物・駄菓子屋を始めるが失敗。再び創作に専念し、「にごりえ」「十三夜」「たけくらべ」などを次々に発表。二十四歳にして肺結核で死去
関礼子[セキレイコ]
1949年生まれ。立教大学大学院文学研究科後期博士課程満期退学。亜細亜大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
59
樋口一葉の原点を見たようでした。女性として文壇にいた一様の素顔が詰まっています。2021/01/10
ピンクピンクピンク
12
二十歳から亡くなる数ヶ月前までの日記書簡が妙録された一冊。歌人としての素養感じる文章で、彼女のルーツが覗けます。そして人生の内にあった貧困、プライド、女性として文壇に生きる様を見ることができます。中でも目に入るのは半井桃水とのスキャンダルに纏わる部分です。それが恋であったのかは定かでありませんが、浮世に頼みとしていた人との間に生じた罅が与えた影響は計り知れません。彼女の持つ「憐れ」の心を深くした一件だったのだと思います。それにしても一葉さんモテモテ、でも解る。僕も日記を読んだだけで惚れちゃいました。2020/06/24
rinakko
11
“しばし文机に頬づえつきておもへば誠にわれは女成けるものを、何事のおもひありとてそはなすべき事かは。” ”我れを訪ふ人十人に九人まではたゞ女子なりといふを喜びてもの珍らしさに集ふ成けり、さればこそことなる事なき反古紙作り出ても今清少よむらさきよとはやし立る、誠は心なしのいかなる底意ありてともしらず、我れをたゞ女子と斗見るよりのすさび。” 若く志高く、早過ぎる晩年。2020/08/31
井月 奎(いづき けい)
11
一葉は個人ではない。作品を書いたのは樋口一葉こと、樋口なつであるが、この素晴らしい日記をなつは妹のくにに「私が死んだら焼いてくれ」と頼んでいます。くにはそれを守りませんでした。仲の良い姉妹として育ったくにが始めた見せた行為で、私たちが読めるのはくにのおかげです。私の中では樋口一葉とは、なつとくにによる樋口姉妹のことです。そしてなつが作家たらんとした覚悟は、もしかしたら自分の命が短いことを知っていたのかもしれません。悲しく切なくなりますが、それでもなお芸術を愛する人は樋口一葉を読んだ方が良いと思います。2015/08/08
双海(ふたみ)
5
現代語訳版も読んでみたいですね。不勉強なもので、原文だけでは理解不十分のようです・・・。2013/12/14