内容説明
幾度も戦乱の地となり、貧困、内乱、難民、人口・環境問題、宗教対立等に悩むアフガニスタンとパキスタンで、ハンセン病治療に全力を尽くす中村医師。氏と支援団体による現地に根ざした実践から、真の国際協力のあり方が見えてくる。
目次
帰郷―カイバル峠にて
縁―アフガニスタンとのかかわり
アフガニスタン―闘争の歴史と風土
人びととともに―らい病棟の改善と患者たちとのふれあい
戦乱の中で―「アフガニスタン計画」の発足
希望を求めて―アフガニスタン国内活動へ
平和を力へ―ダラエ・ヌール診療所
支援の輪の静かな拡大―協力者たちの苦闘
そして日本は…
著者等紹介
中村哲[ナカムラテツ]
1946年福岡市生まれ。九州大学医学部卒。PMS(ペシャワール会医療サービス)総院長。1984年パキスタンのペシャワールに赴任、現在に至るまでハンセン病を柱に貧困層の診療に当たる。2000年からは大旱魃に対して、井戸1300本を掘ると共に大規模な潅漑用水路も建設中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
444
中村哲氏の著作は多いが(本当はそんなことをしている時間も惜しいのだろうが、これもまたより広範な理解を得るため)、本書は比較的その初期(単行本は1993年)のもの。およそ考えられるほどの困難をすべからく集約したかのような地(パキスタン・北西辺境州。後半はアフガニスタン・ダラエ・ヌール)での医療活動。恥ずかしながらそれは私の想像をはるかに超えていた。そして、国連や国際的なNGOが無力であるばかりか、マイナスに機能しかねない現実。中村氏の至りついたのが「無思想・無節操・無駄」の三無主義。まさに「境地」である。2022/05/22
やすらぎ🍀
210
日本で常識とされる治療は不可能だった。称賛される中村哲氏。当時の風当たりは強かった。しかし、中にはいい意味での変わり者がいる。私もその一人だった。…壮大な歴史と民族の多様性。ここに何が必要かを考え実行し変更し継続する。動あれば反動がある。多数が集散する中で地に足をつけ活動を続けた。…俺たちはみんな平和に憧れているんですよ。日本のように。…理由もなく暴行を受けた者の感情はどこに向けたらいいのか。世界は虚構に包まれている。人のための援助ではなく共に生きること。人は生かされている。アフガニスタンを知る貴重な本。2021/05/20
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
134
昨年末に悲報を聞いて初めて中村さんの存在を知った。アフガニスタンとパキスタンの辺境部で、長年らい病を中心に医療活動を行った際のレポート。資金もスタッフも不足する中で必死の思いで地域に根差した活動を行ってきた彼等にとって、現地の実情や風習を知らない国連や各NGOの上辺だけの「援助活動」に対する痛烈な批判はもっともな事だろう。最終章の「そして日本は…」にもガツンと来た。志半ばで凶弾に倒れたのが残念でならない。氏のご冥福をお祈りします。★★★★★2020/06/01
あすなろ
126
こういう方が居たんだと過去形で語る事が無念でならぬ読友さんの読了本に惹かれ読んだ一冊。アフガニスタンで癩病と闘う。病だけでは当然ない。そんな一冊の中で、我々は本当に世界を知らぬ事に先ずは唖然とする。それを取り巻く状況と中村氏の取り組みを理解した上で、改めて取り巻く世界に唖然とする。そして、この本の世界とは全く違う日常を謳歌する我々。決してそれを非難はしていない。謳歌している1人は僕でもあるのだから。でも、それを知ることだけでも大事なことなのだ。2020/08/24
chimako
93
1993年刊行の単行本で読了。いやはやすごい人だとただただ感心するのみ。差しのべた手をにぎってもらうためにはまず相手を知ること。先入観なく相手の真心を感じること。「助けてやっている」「援助してやっている」との上から目線では到底たどりつけなかっただろう偉業。偉業などというと中村さんは空の上で嫌な顔をするのだろうが。ペシャワール会が行ったこと、目指したことは素晴らしい。「どうだ、すごいだろう」などと自慢することもどや顔でメディアに出ることもなく、故郷のようなアフガニスタンの大地で銃撃を受け亡くなった。残念。2020/06/10