内容説明
「アメリカの黒人」はどのようにして誕生したのか?奴隷解放ののち、苦難の道を経て、彼らはアメリカに留まりアメリカ社会の一員たることを選択する。著者はその誕生の時の立ちもどり、黒人たちのさまざまな「物語」のなかに彼らの「共生」の夢を探っていく。しかし真の共生はいまだに実現していない。黒人文化などさまざまな異文化が対等につくりだす「多文化」のアメリカは可能なのだろうか?著者は歴史の声に耳を傾けながら、そう問いかける。
目次
序章 「アメリカの黒人」
第1章 一八五二年・アメリカ
第2章 黒人のディレンマ―ディレイニーの『ブレイク・またはアメリカの小屋』
第3章 リベリアは自由の地か―アメリカ植民協会
第4章 奴隷の語るものがたり―スレイヴ・ナラティヴの伝統
終章 船はどこへ―「プランター号」のロバート・スモールズ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カネコ
0
○2008/08/31
gootaro
0
奴隷解放から160年、公民権法制定から60年が経過したけれど、人種問題は複雑化はするものの改善には至っていない。本書は奴隷解放運動が盛んになり、南北戦争が終結されるまでの間に形成された、アメリカ市民ではないアメリカの黒人がいかなるものかを、文学作品や歴史文書から明らかにしている。奴隷は解放しても共生はできないと考える北部人の態度は、先住民や日系人に対しても同様だった。自由の意味を深く考えさせられた。2023/07/01
伊藤チコ@革命的cinema同盟
0
よくあるタイプの黒人ものなんだけど本書では文学からアプローチしてる。有名なアンクルトムの小屋を批判的に指摘し、それに対比させて黒人文学の物語からアメリカ史を紐解いている。またアメリカの、これは実際にあったことで有名なんだけど、黒人をアフリカに移民させる計画について黒人たちがどう思っていたのかを記している。その中でエチオピアが候補に挙がっている。2020/04/20