内容説明
「どんなきっかけで時代錯誤な忍術物語を書きはじめたのか、じぶんでも忘れてしまったが、いまくびをひねって思い出してみると、どうやら「水滸伝」を私流に書いてみないかとすすめられたことが端緒となったような気がする」(「『今昔物語集』の忍者」より)。風太郎忍法帖の多彩さの極みは短篇にある。長らく読めなかった短篇を多数収録するシリーズ第一弾。
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
大正11(1922)年、兵庫県養父郡関宮町の医家に生れる。昭和24年、「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で第二回探偵作家クラブ賞を受賞。昭和33年、忍法帖の第一作「甲賀忍法帖」の連載を開始。その後も数々の“風太郎忍法”を生みだし、昭和38年から「山田風太郎忍法全集」を刊行、忍法ブームをまきおこす。更に昭和48年より「警視庁草紙」「明治波涛歌」「エドの舞踏会」など独得の手法による“明治もの”を発表。平成9年第45回菊池寛賞を受賞。平成13(2001)年7月28日逝去
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感想・レビュー
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けやき
48
本編は初めてですが作品は全て既読済み。しかしそんなことは関係なく面白い。山田風太郎生誕100年記念というわけでもないですが忍法帖の短編を読みたく思い手にとりました。「忍者本多佐渡守」が秀逸。稀代の謀臣がうまく描かれてます。「忍者服部半蔵」も好き。役割というものはかくまでも人を変えるのかと言ったところ。大満足でした!2022/06/01
kokada_jnet
36
忍法帖の短編作品を読むのは初めてですが。この本はイマイチ。史実にあわせた感じで、短編だと、奇想がふくらむ前に小説が終わってしまう感じ。2021/04/18
星落秋風五丈原
20
ざっと並べた収録作のタイトルを見て、「おや?」と思われた貴方は歴史に詳しい。そう、この中には忍者として後世に知られていない人が混じっている。それでも、稀代の大泥棒・石川五右衛門は、やってる事が似ているし、「忍者だった」と言われても、意外性はない。しかし、例えば明智十兵衛はどうか。明智十兵衛、よく知られている名では明智光秀。織田信長を本能寺に襲った、あの男だ。また、本多佐渡守、よく知られている名では本多正信。真田信之の舅、武功で名を挙げた本多平八郎忠勝とは異なり、専ら帷幄において謀を巡らせた家康の忠臣である2004/06/24
二笑亭
7
最初期に書かれた忍法帖の短篇集のため、全体的に奇想は控えめ。怪奇色の強い「忍者明智十兵衛」。徳川幕府内部の権謀術数をサスペンスフルに描いた「忍者本田佐渡守」。一部設定を変えそのまま『忍法忠臣蔵』に流用された「忍者帷子乙五郎」の3篇が個人的にお気に入り。2022/08/22
サケ太
7
奇々怪々な短編の連続。様々な忍者、忍法が出てくる。その忍法により、運命が変わり、されど因果にとらわれる。あるものは滅び、あるものは栄える。男女の関係、野望の業深さ。個人的には「忍者服部半蔵」に引き込まれてしまった。ある人間に影響され、立場を与えられてからの劇的な、変貌、まさしく変身。そして「『今昔物語集』の忍者」で知る山田風太郎先生の発想、昔の物語の面白さ。素晴らしかった。2015/12/14