内容説明
同僚の教師や生徒たちの生態を動物に擬してコミカルに描いた表題作に唯一の童話集『王様の背中』を併せて収録。谷中安規氏の美しい版画と共に楽しめる一冊。
著者等紹介
内田百〓[ウチダヒャッケン]
1889‐1971。小説家、随筆家。岡山市の造り酒屋の一人息子として生れる。東大独文科在学中に夏目漱石門下となる。陸軍士官学校、海軍機関学校、法政大学などでドイツ語を教えた。『冥途』『旅順入城式』『百鬼園随筆』『阿房列車』など著書多数。1967年、芸術院会員推薦を辞退。本名、内田栄造。別号、百鬼園
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感想・レビュー
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Mark
19
漱石の“坊ちゃん”を思わせるようなユニークな登場人物たち。百閒先生初の新聞連載だったのですが、なんとその新聞社が潰れてしまい、尻切れトンボになってしまいました。独逸語教師のネコラツ(ネコがラッパを吹く)先生の書生の語りで、居候が身の回りに起こる日常のごたごたを語る形式です。後半のおとぎ話数編は、百閒先生には珍しいものですが、“教訓はなんにも含まれて居りませんから、皆さんは安心して読んでください”とは、いかにも百閒先生らしいと思いました。2020/12/29
猫丸
12
おいこらオッサン、小説が途中でうやむやになっとるがな。連載元がツブれたおかげで伏線だけの珍小説が生まれてしまった。強制終了の憂き目に遭いつつも、急に連載から解放された嬉しさの方が勝つんだね。普通なら売り物にならないはずだが、こうしてちゃんと集成に収まっているのが百閒の得なところ。そういうの、漱石先生はいい顔しないぜ。周到な文章も書けるくせに、いい加減に手を抜いているように見える場合がある。百閒のそういうところに近親憎悪に似た感じを抱く。じぶんにも通じるエーカゲンさ。それでも結構通用しちゃうから尚更。2023/06/05
九鳥
7
新聞社がつぶれて未完の新聞小説と、なんの教訓も含まれていない童話をまとめたおかしな本。序文で吹いた。味のある版画の挿絵入り、おまけ資料に武井武雄のイラストまで収録されて豪華。絵を見るだけでも楽しい。2009/02/04
魚政
2
谷中安規氏の版画も めちゃめちゃキュート2008/11/03
いきもの
1
途中で連載が終わったいつもの随筆に近いノリの小説(時々不気味さがかいまみえるが)と特段落ちも教訓もない童話2019/01/02