内容説明
江戸川乱歩に認められてデビューし、幻想的なミステリーから純文学まで幅広く活躍した名手の短篇を収録した作品集。
著者等紹介
氷川瓏[ヒカワロウ]
1913年(大正2)年東京生まれ。本名渡辺祐一。東京商科大学卒。1946(昭和2)年、同人誌に掲載されていた「乳母車」が江戸川乱歩の目にとまり『宝石』に発表。1952(昭和27)年『三田文学』に発表した「洞窟」が直木賞候補となる。1953(昭和28)年『宝石』に発表した「睡蓮夫人」で第7回探偵作家クラブ新人奨励賞を受賞。1989(平成元)年没
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968年神奈川県生まれ。出版社勤務を経て、ミステリ評論家・フリー編集者として活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かわうそ
21
幻想小説とミステリーが混在していてどの方向に着地するのか予想できないことから生じる意外性がよかった。お気に入りは「乳母車」「風原博士の奇怪な実験」「路地の奥」あたり。2016/01/23
スリーピージーン
8
初読みで感動するほどおもしろかった。いい作家を見つけた。日本語の美しさを再認識した。ちくまさん復刊してくれないかなぁ。あちこちの図書館をWebでめぐって探し当てて借りた。音楽に造詣の深い作家らしく、よくクラシック音楽がでてくる。風景描写も緻密で映像が浮かぶようである。ミステリーとしては奇抜な所はないが、全体的な雰囲気が湿り気のある不安や恐怖を感じさせる。「乳母車」「窓」「天使の犯罪」「睡蓮夫人」「陽炎の家」「悪魔のトリル」ほか短編が全部で16編。氷川瓏(ろう)(1913~1989)2014/08/16
reiG
2
乱歩通俗物のリライトの殆どを手がけた、知る人ぞ知る不遇の作家、氷川瓏唯一の作品集。オリジナルのミステリ作品は十数編しか発表されていない、ある意味幻の作家だが、アンソロジーに「乳母車」や「白い外套の女」など多くの作品が採られており、知名度は意外と高い。読んでみるとどの作品も、確かな文章力に支えられた、幻想的で美しい小品ばかりだった。不倫または叶わぬ恋の末に破局が…というパターンが目立ちすぎる気もするが、「睡蓮夫人」「浴室」「陽炎の家」あたりは特に気に入った。2017/01/03
みっく
2
「乳母車」が特に面白いです。短い話でありながら独特の世界観を紡ぎ出しています。2009/04/11
青
1
進んでは止まり、読了まで結構時間がかかった。表題の「睡蓮夫人」や「乳母車」もよかったけれど、なぜか「窓」の「--凄いようによく切れる。」が残っている。2012/11/05