内容説明
時代とは、革命とは、愛国心とは。テロルを生み、実行へと駆り立てる動機とは。来島恒喜、朝日平吾、難波大助、小沼正…。彼らは、一体どんな人物だったのか。その時、なにを思ったのか。明治から大正、昭和にかけて登場したテロリストたちの実像に迫る、かわぐちかいじの原点ともいうべき傑作劇画。
目次
明治篇(紀尾井坂の兇刃;綺異譚 来島恒喜;大逆なり)
大正篇(一人一殺;謀殺大尉甘粕正彦;魔弾の狙撃者)
昭和篇(血盟団;戒厳令;一人だけの聖戦)
著者等紹介
かわぐちかいじ[カワグチカイジ]
明治大学文学部在籍時、『夜が明けたら』で漫画家としてデビュー。以来、精力的に執筆、数々のヒット作を発表し続けている。『アクター』『沈黙の艦隊』『ジパング』でそれぞれ第11回、第14回、第26回講談社漫画賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
S.Mori
13
今の作者の画風からは想像もつかない暗くて、重たい絵が心に残ります。明治から昭和までのテロリストを描いた作品です。登場人物たちの暗い情念に引き込まれながら、読みました。多くのテロリストたちは、この世を良くするというより、自分の中にある得体のしれない感情を爆発させるためにテロという行為に手を染める気がしました。最後の章に東条英機を暗殺しようとする男が出てきます。失敗し、ボロ切れのように捨てられる彼の姿が哀れでした。この章には作者の苦い歴史認識がこめられていると思います。2020/05/03
たっこ。
7
危険であることを承知で言いますが,読むとこの本に出てくるテロリストの少なくとも一部には相当の好感を抱いてしまいます。もちろん感心しない人もいるし,テロリズムには断固反対なわけですが,「人=ist」があまりにも上手に書かれているのです。悪人役もいかにも悪人役らしく書かれているし,虚実の混ぜ方も絶妙で,これはまあ創作なのだな,と思っておかないといけないのでしょう。後日譚的なものを一切排して,テロルそのものの場面でぶちって終わるのもうまい。2016/02/01
keint
5
明治(大久保利通暗殺)から終戦直後(東條英機自決未遂)までのテロ事件を描いている。いくつかの内容は虚構が織り交ぜられているとはいえ(二・二六事件に参加した徳川貴臣中尉は架空の人物、東條英機自決未遂を中野正剛の門下生の暗殺としていることなど)、テロリストたちの人間くさい面まで描写しているところはさすがだと感じた。以前見た映画「日本暗殺秘録」を思い出すような内容であった。2020/03/12
mori-ful
2
解説は鈴木邦男。重信房子の父は血盟団に入っていた。鈴木によると、父は「房子は右翼ですよ」といっていたという。戦前、右翼は「反体制の牙」だった。いまや、体制の補完物だというが、現在また捻じれているのかもしれない。2016/03/12
Kenshi
1
かわぐちかいじは日本人の顔を描くのがうまい。2017/10/10