内容説明
半ズボンに坊主頭、リュックを背負って九州、山陰、東北とぶらりぶらりの珍道中。「わしも山下清に毛のはえたような男です」という言葉を耳にした清は、「ぼくのどこに毛がはえるとあなたになるのですか」―。笑いを誘い、かつ考えさせられる文章とスケッチで綴る放浪記。
目次
九州あちらこちら
阿波のバカ踊り
山陰ぶらりぶらり
港と黒ん坊
男湯と女湯
東京の「日本一」見学
しし踊りとグレート・デン
仙台の七夕まつり
竿灯と秋田犬
山寺のすべり台
将棋風呂
紙の大仏
加治のサクラを見た
蛍いか
ゆで卵となま卵
サイン病
どこでも少佐
うちの家内
ジェット機をみる
放浪よさよなら
著者等紹介
山下清[ヤマシタキヨシ]
1922‐1971。貼絵画家。養護施設八幡学園で貼絵を習い、急速に才能をのばす。点描派風の作品は、卓抜な描写力を示し、式場隆三郎、戸川行男らの世話で世に紹介され、画壇や識者を驚かせた。1940年、学園をとびだした後、放浪・帰園をくりかえし、“日本のゴッホ”“裸の大将”と呼ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ🍀
189
18歳の秋、つい黙って家を出てしまった、放浪の旅。今年の花火どこに行こうか。最後の言葉だった。ぼくは金をつかってものをみることは滅多にないので。ぼくは黙っていてもうれしいので。清ちゃんは何でも訳を聞くが、何でも理由があるとは限らないんだよ。そう言われたんだ。聞いてもまた分からない返事にぶつかるから、もう黙っていようということにしている。ぼくが泣いたことがないというとみんな不思議がる。笑うことも下手なので笑わない。でも世界が美しすぎて描けない夜もある。芸術家、山下清さんが日本中をぶらりぶらりしたエッセイ集。2023/04/12
こばまり
47
先に読んだヨーロッパ編同様、本書にもハッとするフレーズが多々。しかしそれ以上に考えさせられたのは式場隆三郎氏の存在だ。天衣無縫を本質とするアール・ブリュットに於いてプロデューサーの役割とは。絵画のみならずエッセイにも演出が施されている様子。やや言い訳めいた式場氏のあとがきも興味深い。2016/06/26
Shoji
31
ユーモアとペーソスに満ち溢れた一冊です。デリカシーのない言動、とっても困った言動が随所に出てきますが、山下本人はいたって無邪気。幸せな気分にしてくれます。幼少の頃、知能が劣っていることで、いじめの標的になったそうだ。無邪気な山下は理解が出来ず、いじめられては刃傷沙汰が日常茶飯事だったと年譜に書かれている。そんな時代に、山下が縁あって創作した一枚のちぎり絵が人生を変えた。そう考えると、人生、どこでどう転ぶか分からないものだ。山下清の展覧会を今、無性に見てみたい。2023/07/13
とみやん📖
28
どこにも行けないステイホーム週間なので紀行文でもと思い気軽に読んだ。子供の頃芦屋雁之助が扮する山下清のドラマを見ていたが、ご本人の作品に触れてみるとあのドラマは良く出来ていたと思う。朴訥とした文章がよい。時折どきりとするような感想も。マジック画が挿絵で掲載されているがとても味わいがある。5月になると放浪したくなり施設からいなくなり、駅や有縁の人の家に泊まりながら、温泉、お祭り、観光地を季節ごとにさすらうなんて、とても羨ましい生き方と思えた。我が祖母の4つ上と思うと遠い昔の人ではなく身近な存在と感じられる。2020/04/29
3月うさぎᕱ⑅ᕱ゛
28
山下清さんの日記を少し手直しした旅行記。各地でスケッチしたものが沢山挿絵として載せてある。独特の文章や感性、日記からみてとれる性格などとても興味深く読むことができた。強い劣等感から軽い傷害事件を起こしたことや強制入院させられたりとか、放浪中にひどい扱いを受けたことなどつらい経験は多かったよう。それでも旅行記からはいつまでも素直で純粋な気持ちだったり、自分と人との関係を深く考えている様子がうかがえる。物事の意味を知ろうとする姿勢や記憶力や行動力に感心する。とても尊敬するしとても愛すべき人。2017/05/03