内容説明
“裸の大将”の目に写ったヨーロッパとは。―ジェット機に乗って「ときどきかじを下に向けないと地球の外へとびだしやしませんか」と心配したり、ゴンドラの町にパンツのほしてあるのを見て日本をなつかしむ。「がいせん門は兵隊のくらいで大将だ」と納得。美しい細密画と訥々とした文章で綴るほのぼの紀行。
目次
出発まで
とび出すジェット機
ハンブルクのかみなり
日本語のわかるリス
こじきがいないスウェーデン
はだかの外国女
やさしい国・オランダ
ロンドンの番兵さん
地球に線がひいてある
つゆのないパリ
アベックは画けない
モンマルトルは浅草
ユングフラウで立小便
ローマ女のオッパイ
しめった東京の空
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
164
「人間は裸になることができないくせに、石や銅の像になると男でも女でもパンツをはかないので、それをみんなで感心してみているのはどういうわけだろう」「いくら大事にされても兵隊にとられて死ぬのはいやな人もあるので、なりたい人だけ兵隊にすればいいので、なりたい人がすくなすぎれば、戦争をしなければだれも戦死しなくなるので…」ほのぼのと、ときに鋭く、思ったことをありのままに綴ったヨーロッパ旅行記。私も清さん目線でヨーロッパを満喫しました。添えられた細密画もさすがの一冊でした。2020/08/23
yuzuriha satoshi
37
赤瀬川原平曰く「山下清は過激な質問者である」 清の無垢な言葉が周りの人間の本質を暴き出す といったら大げさだけど 清と周囲の人間との会話の微妙なズレが面白い 清のように考えても実際には周囲の人間と同じように行動してしまうのだろうなあ スケッチはもういうことありません2013/11/06
niisun
27
美術展巡りが趣味で、近現代美術、特に現代なら奈良美智、近代なら高橋由一など、日本の作家さんが好みです。しかし、子供が生まれてからは、ゆっくり美術館をめぐることも減ってしまいました。 そう言う時はやっぱり本ですね♪この本は、まだまだ海外旅行が珍しかった昭和30年代に、放浪画家の山下清が、欧州を巡った際の日記とスケッチを中心に編集されたもので、企画展を観るような面白さがありました! 山下清のひととなりはもちろん、彼の物事や風景の捉え方が、よく分かる本でした。彼の目を通して丁寧に点描された絵は、本当に素敵です!2016/06/08
Tomoichi
21
まだ海外旅行が自由化される前、1ドル=360円の時代、1961年昭和36年にヨーロッパを中心に海外渡航した際の記録と作品。クオリティも上がっているのはもちろん、当時の海外旅行の雰囲気も感じられ、また式場氏とのやりとりも面白い。ある意味子供の視点のままで語られる山下清独特の文章は何か大人という幻想の中で生きる大人と言われる人たちに子供の頃の気持ちや感情を思い起こさせ、懐かしい思いにさせる。2023/09/26
tosca
21
画家・山下清が初めて行ったヨーロッパの旅行記。ドラマ「裸の大将」を観た事がないので、氏については、放浪癖があって養護施設を度々抜け出したり戻ったりした画家くらいのざっくりした知識しかなかったが、いや素晴らしい旅行記だ。本人の日記をもとに編集した物らしいが、ひらがなが多めだったり、本人の言葉がそのまま書かれているのが本当に感情がそのまま伝わってくる。ウケ狙いで書いた文章とは違って、一つ一つの文章が面白かったり微笑ましかったり、心が洗われました。ただ、付き添いの式場先生は道中、気を抜けなかっただろうな(笑)2021/03/15