ちくま文庫<br> 失われた時を求めて〈8 第5篇〉囚われの女

ちくま文庫
失われた時を求めて〈8 第5篇〉囚われの女

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  • サイズ 文庫判/ページ数 784p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480027283
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

優希

79
アルベルチーヌとの暮らしはかなったものの、それが嫉妬の日々であるというのが苦しかったです。嫉妬するために愛すると言いますが、ここには愛情という形は存在しないように思えてなりません。占有力とも言うべき力が全編を貫いているのでしょうね。様々な人物の死やヴァントゥイユの傑作が想像もつかない形で出ることがこの巻の物語に大いなる意味を加えているようにも思えます。悪魔的な空気をようやく見たような気がしました。2018/05/16

mii22.

43
第5篇では疑念と嫉妬からアルベルチーヌをパリに連れ帰り同棲生活をはじめる「私」。アルベルチーヌに対する想いは愛情なのか..嫉妬は限りないが愛情は感じられず、かといって占有力は強くアルベルチーヌはまさに囚われの女状態に。しかし「私」も嫉妬というものに囚われている。何しろ昔の死んだ恋「ジルベルト」に対してもまで嫉妬を目覚めさせてしまうのだから。延々と続く「私」の(愛情=嫉妬)の考察は理解に苦しむ。そしてこの巻ではシャルリュス氏の凋落ぶりが目を覆うばかりで可哀想だ。2016/05/31

20
前巻と比べると読み進めるのが難しかった。アルベルチーヌと同棲しながらも話者は嫉妬心に苦しむ。そもそも嫉妬心から同棲が始まったのだから当然だ。またシャルリュス氏はヴェルデュラン夫人の策略でモレルを失う。こちらもシャルリュス氏の傲岸不遜な態度が原因なので、当然の結果といえるかもしれない。話者の移ろう心の細密な描写は絶妙なのだけれど、アルベルチーヌとの関係自体にはいい加減ウンザリする。囚われているのは彼女だけではなく話者もだろう。文学に関する部分は面白かったが、物語的にはちょっと合わない巻だ。 2015/02/12

かふ

16
この章で注目すべきは、作家論に触れていて、ドストエフスキーの同一のテーマはそれぞれの作品の中で変奏されるという。それは「罪と罰」という一大長編小説とみなしうるもので、その後に続くのは変奏としとの「罪と罰」なのだ。それはバルザックの小説郡が一つの仮想世界であり、大作家の文学は、そういうことを書き続けることだという。変奏ということは、ヴァントイユの七重奏曲の演奏会が、一つのクライマックスとして効果的に描かれている。2022/06/30

Bartleby

11
この巻以降は、プルースト死後、遺稿をまとめて出版されている。"嫉妬"の巻。「私」は花咲く乙女の1人アルベルチーヌとパリで同棲を始める。しかし彼女が同性愛かもしれないという疑惑は晴れず、「私」はなかば監禁のような状態でアルベルチーヌを閉じこめておく。外出時には見張りまでつける始末。彼女への愛は妄執へと変わっていく。かたやシャルリュス男爵は、執着するヴァイオリニストの愛人モレルからは社交界で公然と冷たくあしらわれる憂き目に。劇的な心理の波乱がこれでもかと描かれる。2022/09/22

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